なぜ用語を英語でも覚えるべき?
結論から言うと、訳語がひとつに決まっていないからです。PMI の用語はもともと英語で、日本語の訳は教材ごとに少しずつ違います。
たとえば Issue Log は「課題ログ」とも「課題管理表」とも訳されます。英語を知っていれば、訳が違っても同じものだと気づけます。訳文が硬くて読みにくいときも、元の英語を思い浮かべると判断が早くなります。
受験時の画面で英語を表示できるかなどは、PMI 公式の案内で確かめてください。覚え方のコツは3つです。
- 英語を先に、日本語を後に:英語は語の形が意味を表しています。Work Breakdown Structure は「作業を分解した構造」です。
- 似た語は対で覚える:リスクと課題、検証と妥当性確認などです。見分け方は後半の表にまとめました。
- 場面とセットで覚える:課題ログなら「起きた問題を記録し、担当と期限を決める」までを1セットにします。
PMBOK®ガイドの位置付けや版の違いは PMBOKとは? で、試験範囲そのものは 新ECO(2026年版)の解説 で扱っています。
計画・スコープ・スケジュールの用語は?
まずは計画づくりの土台になる25語です。スコープ(何を作るか)とスケジュール(いつ作るか)は、予測型の問題でほぼ毎回出てきます。
| 日本語 | 英語 | ひとことで |
|---|---|---|
| プロジェクト憲章 | Project Charter | プロジェクトを正式に認め、PM に権限を与える文書 |
| プロジェクトマネジメント計画書 | Project Management Plan | 各分野の計画とベースラインを束ねた計画 |
| スコープ | Scope | 作るもの(成果物)と、そのための作業の範囲 |
| 要求事項 | Requirements | ステークホルダーが満たしてほしい条件 |
| 要求事項トレーサビリティ・マトリックス | Requirements Traceability Matrix | 要求と成果物・テストを結び付けた表 |
| スコープ記述書 | Scope Statement | 成果物・除外事項・受入基準などを書いた文書 |
| WBS | Work Breakdown Structure | 成果物を階層的に分解した図 |
| ワーク・パッケージ | Work Package | WBS の最下位の要素 |
| WBS 辞書 | WBS Dictionary | WBS の各要素の詳しい説明 |
| スコープ・ベースライン | Scope Baseline | 承認済みのスコープ記述書・WBS・WBS辞書 |
| スコープ・クリープ | Scope Creep | 変更管理を通さずにスコープが広がること |
| ゴールド・プレーティング | Gold Plating | 頼まれていない機能をチームが勝手に足すこと |
| アクティビティ | Activity | ワーク・パッケージを実行するための作業 |
| マイルストーン | Milestone | 所要期間ゼロの重要な時点 |
| 依存関係 | Dependency | 作業の前後関係(FS・SS・FF・SF) |
| リード/ラグ | Lead / Lag | 後続作業の前倒し/待ち時間 |
| クリティカル・パス | Critical Path | 最も長い経路。遅れると完了日が遅れる |
| フロート(余裕) | Float / Slack | 完了日を遅らせずに遅らせられる日数 |
| ガントチャート | Gantt Chart | 作業を横棒で日付に並べた図 |
| スケジュール・ベースライン | Schedule Baseline | 承認済みのスケジュール |
| クラッシング | Crashing | 資源を足して期間を縮めること |
| ファスト・トラッキング | Fast Tracking | 順番の作業を並行させて期間を縮めること |
| 資源平準化 | Resource Leveling | 資源の山を崩すため日程を調整すること |
| ローリング・ウェーブ計画法 | Rolling Wave Planning | 近い作業は詳しく、遠い作業は粗く計画する |
| 段階的詳細化 | Progressive Elaboration | 情報が増えるにつれ計画を詳しくしていくこと |
このうち試験で差が付くのは、スコープ・クリープとゴールド・プレーティング、クラッシングとファスト・トラッキングの区別です。見分け方は後半の表で整理しました。スケジュールの図の書き方は ガントチャートとは? で解説しています。
コスト・品質・リスクの用語は?
次はお金・出来栄え・不確実性の25語です。計算問題(EVM)と、リスクと課題を区別する問題がよく出ます。
| 日本語 | 英語 | ひとことで |
|---|---|---|
| コスト・ベースライン | Cost Baseline | 承認済みの時間軸つき予算。コンティンジェンシー予備を含む |
| コンティンジェンシー予備 | Contingency Reserve | 特定したリスクに備える予備費 |
| マネジメント予備 | Management Reserve | 想定外に備える予備費。使うには承認が必要 |
| アーンド・バリュー | Earned Value (EV) | 終わった作業の価値(予算ベース) |
| 計画価値 | Planned Value (PV) | 今日までに終わる予定だった作業の価値 |
| 実コスト | Actual Cost (AC) | 実際に使った金額 |
| CPI/SPI | Cost / Schedule Performance Index | コスト効率(EV÷AC)/進み具合(EV÷PV) |
| 完成時総コスト見積り | Estimate at Completion (EAC) | 今の見通しでの最終コスト |
| サンク・コスト | Sunk Cost | すでに使って戻らない費用。判断材料にしない |
| 品質 | Quality | 要求をどれだけ満たしているか |
| グレード | Grade | 機能や特性の種類・等級。品質とは別の軸 |
| 品質コスト | Cost of Quality (CoQ) | 適合コスト(予防・評価)と不適合コスト(失敗) |
| 品質保証 | Quality Assurance | プロセスが正しく回っているかを見る |
| 品質管理 | Quality Control | 成果物を検査して基準を満たすか確かめる |
| 管理図 | Control Chart | 工程が安定しているかを時系列で見る図 |
| パレート図 | Pareto Chart | 原因を多い順に並べ、累積比率を重ねた図 |
| 特性要因図 | Cause-and-Effect Diagram | 結果と原因を魚の骨の形で整理した図 |
| 根本原因分析 | Root Cause Analysis | 表面の症状でなく元の原因を探すこと |
| リスク | Risk | 起きるかもしれない不確実な事象(脅威と好機) |
| 課題 | Issue | すでに起きている問題 |
| リスク登録簿 | Risk Register | 特定したリスクと対応を記録する表 |
| リスク・オーナー | Risk Owner | そのリスクの監視と対応を担う人 |
| 回避・転嫁・軽減・受容 | Avoid / Transfer / Mitigate / Accept | 脅威への代表的な対応 |
| 二次リスク | Secondary Risk | 対応策を実施したことで生まれる新しいリスク |
| 残存リスク | Residual Risk | 対応した後にも残るリスク |
リスク(まだ起きていない)と課題(もう起きた)の区別は、選択肢を絞るときの基本です。リスクが現実になったら、登録簿の対応策を実行し、課題ログで追います。
人・ステークホルダーの用語は?
新しい試験では People 領域が33%を占めます(ECO 2026年版)。チームと関係者に関する20語です。
| 日本語 | 英語 | ひとことで |
|---|---|---|
| ステークホルダー | Stakeholder | プロジェクトに影響する人・される人 |
| ステークホルダー登録簿 | Stakeholder Register | 関係者と関心・影響度の一覧 |
| ステークホルダー・エンゲージメント | Stakeholder Engagement | 関係者を巻き込み、関わり方を良くすること |
| スポンサー | Sponsor | 資金と後ろ盾を出し、プロジェクトを支える人 |
| コミュニケーション・マネジメント計画 | Communications Management Plan | 誰に何をいつどう伝えるかの計画 |
| RACI チャート | RACI Chart | 実行・説明責任・相談・報告で役割を示す表 |
| 責任分担マトリックス | Responsibility Assignment Matrix (RAM) | 作業と担当者の対応表。RACI はその一種 |
| チーム憲章 | Team Charter | チームの価値観や約束ごとをまとめた文書 |
| グランド・ルール | Ground Rules | チームの行動のきまり |
| タックマン・モデル | Tuckman Model | 形成・混乱・統一・機能・解散のチームの発達段階 |
| サーバント・リーダーシップ | Servant Leadership | チームに仕え、障害を取り除くリーダーシップ |
| エモーショナル・インテリジェンス | Emotional Intelligence | 自分と他人の感情を理解し扱う力 |
| コンフリクト・マネジメント | Conflict Management | 対立を解決・活用すること |
| 協調/問題解決 | Collaborate / Problem Solve | 双方の意見を合わせて根本から解決する方法 |
| 権限 | Authority | 決める・指示する正式な力 |
| 影響力 | Influence | 権限によらず人を動かす力 |
| バーチャル・チーム | Virtual Team | 離れた場所で働くチーム |
| コロケーション | Colocation | チームを同じ場所に集めること |
| ナレッジ・トランスファー | Knowledge Transfer | 知識を人や組織へ引き継ぐこと |
| 教訓 | Lessons Learned | 経験から得た学び。途中でも記録する |
アジャイルの用語は?
ECO 2026年版では、予測型が約40%、残りの約60%がアジャイル(適応型)とハイブリッドです。スクラムの言葉を中心に20語を選びました。
| 日本語 | 英語 | ひとことで |
|---|---|---|
| スクラム | Scrum | 短い期間を繰り返して価値を届ける枠組み |
| スプリント | Sprint | 1か月以内の固定の開発期間 |
| プロダクト・オーナー | Product Owner | バックログの優先順位に責任を持つ人 |
| スクラム・マスター | Scrum Master | スクラムが機能するよう支える人 |
| 開発者 | Developers | インクリメントを作る人たち |
| プロダクト・バックログ | Product Backlog | やることを優先順に並べた一覧 |
| スプリント・バックログ | Sprint Backlog | そのスプリントでやることと計画 |
| インクリメント | Increment | 使える状態になった成果 |
| 完了の定義 | Definition of Done (DoD) | 「完了」と言える共通の基準(スクラムガイド日本語版では「完成の定義」) |
| ユーザー・ストーリー | User Story | 利用者の視点で書いた要求 |
| ストーリー・ポイント | Story Point | 作業の大きさの相対的な見積り |
| ベロシティ | Velocity | 1スプリントで終わるポイントの実績 |
| バーンダウン・チャート | Burndown Chart | 残作業の減り方を示す図 |
| デイリー・スクラム | Daily Scrum | 毎日15分の進み具合の確認 |
| スプリント・レビュー | Sprint Review | 成果を関係者に見せ、意見をもらう場 |
| レトロスペクティブ | Retrospective | 進め方をふり返り、改善を決める場 |
| タイムボックス | Timebox | 延ばさない、決められた時間枠 |
| MVP | Minimum Viable Product | 学ぶために最小限で作った製品 |
| カンバン | Kanban | 作業を見える化し、仕掛りを制限する方法 |
| 情報ラジエーター | Information Radiator | 誰でも見られる場所に掲示した進み具合 |
全体・組織の用語は?
最後に、どの分野にもまたがる10語です。Business Environment 領域(26%)の問題で、前提としてよく出てきます。
| 日本語 | 英語 | ひとことで |
|---|---|---|
| プロジェクト | Project | 期間が決まっていて、独自の成果を生む取り組み |
| プログラム | Program | 関連するプロジェクトをまとめて管理するもの |
| ポートフォリオ | Portfolio | 戦略目標のために束ねた事業・プログラム・プロジェクト |
| PMO | Project Management Office | プロジェクト管理を支援・統制する組織 |
| 組織のプロセス資産 | Organizational Process Assets (OPA) | 社内の手順・テンプレート・過去の記録 |
| 組織体の環境要因 | Enterprise Environmental Factors (EEF) | PM が変えにくい社内外の条件 |
| テーラリング | Tailoring | 状況に合わせてやり方を調整すること |
| 変更要求 | Change Request | ベースラインなどを変える正式な依頼 |
| 変更管理委員会 | Change Control Board (CCB) | 変更要求を審議・承認する会議体 |
| ガバナンス | Governance | 意思決定の仕組み・ルール・エスカレーション経路 |
これで合計100語です。次の章からは、覚えた用語を試験で使える形に整えます。
まぎらわしい用語はどう見分ける?
試験の選択肢には、似た用語がよく並びます。間違えやすい8組を、見分けるポイントと問題文の目印で整理しました。
| まぎらわしい組 | 見分けるポイント | 問題文の目印 |
|---|---|---|
| リスク/課題 | まだ起きていない/もう起きた | 「連絡があった」「発生した」なら課題として動く |
| スコープ・クリープ/ゴールド・プレーティング | 要望が変更管理を通らずに入る/頼まれていない機能をチームが足す | 誰が言い出したかを見る |
| クラッシング/ファスト・トラッキング | 資源を足して縮める/作業を並行させて縮める | 代償が費用の増加か、手戻りのリスクか |
| 品質保証/品質管理 | 進め方(プロセス)を点検する/成果物を検査する | 見ている対象がプロセスか成果物か |
| 品質管理/スコープの妥当性確認 | チームが仕様どおりか確かめる/顧客が受け入れる | 順番は品質管理が先 |
| コンティンジェンシー予備/マネジメント予備 | 特定したリスクに使う/想定外に使う(使うには承認が要る) | リスク登録簿に載ったリスクかどうか |
| アウトプット/アウトカム | 作ったもの/それで起きた変化 | 成果物ができても変化がなければ目的は未達 |
| 品質/グレード | 要求を満たす度合い/機能や等級の違い | 低いグレードは問題とは限らないが、低い品質は問題 |
迷ったら英語に戻すと区別しやすくなります。Risk と Issue、Output と Outcome のように、英語では最初から別の言葉です。
訳語がゆれる用語は?
同じ英語でも、教材によって訳が違う用語があります。よく迷う9語について、当サイトの表記と、ほかでよく見る表記を並べました。
当サイトの表記は、完了の定義を除き、PMBOK®ガイド第8版日本語版で使われているものです。ほかの訳を見かけても、英語が同じなら同じ意味です。
| 英語 | 当サイトの表記 | ほかでよく見る表記 |
|---|---|---|
| Stakeholder | ステークホルダー | 利害関係者 |
| Project Manager | プロジェクト・マネジャー(PM) | プロジェクトマネージャー |
| Issue Log | 課題ログ | 課題管理表、課題登録簿 |
| Earned Value | アーンド・バリュー | 出来高 |
| Acceptance Criteria | 受入基準 | 受け入れ基準 |
| Definition of Done | 完了の定義(DoD) | 完成の定義(スクラムガイド日本語版) |
| Steering Committee | 運営委員会 | ステアリング・コミッティ |
| Information Radiator | 情報ラジエーター | インフォメーション・ラジエーター |
| Sustainability | 持続可能性 | サステナビリティ |
日本語で受験する場合も、英語を知っていれば訳語の違いに振り回されません。
新しいECOではどんな言葉が目立つ?
ECO 2026年版では、ガバナンスやコンプライアンスの比重が上がりました。表の100語に加えて、次の7語を押さえると問題文が読みやすくなります。
- 持続可能性(Sustainability):環境や社会への影響まで考えて管理すること。ECO では品質やリスクのタスクの例に入っています。
- コンプライアンス(Compliance):法令や規制、社内の規程を守ること。どの程度守れているかを測ることまで求められます。
- エスカレーション(Escalation):自分の権限を超える問題を、決められた経路で上に上げること。経路としきい値はガバナンスで決めます。
- 成功指標(Success Metrics):何をもって成功とするかの尺度。期限や予算だけでなく、価値や成果も含めて考えます。
- 障害(Impediment):チームの作業を妨げているもの。影響を評価し、優先順位を付けて取り除きます。
- アーティファクト(Artifact):計画書やログなど、プロジェクトで作って使う文書や記録。必要なものを選び、誰もが見られる状態に保ちます。
- ベネフィット(Benefits):成果物が使われて組織が得る利益。測る仕組みがあるかを確かめます。
用語は試験でどう問われる?
新しい試験は状況問題が中心で、用語の定義だけを問う問題は多くありません。用語は、問題文や選択肢の中に出てきます。
- 問題文の用語で状況をつかむ:「リスク登録簿に載っている」とあれば、対応策が準備済みだとわかります。
- 選択肢の用語で行動を比べる:「変更要求を出す」「課題ログに記録する」など、用語が行動の正しさを左右します。
- 進め方で答えが変わる:同じ優先順位の変更でも、スクラムならプロダクト・オーナー、予測型なら変更管理の手順が軸になります。
用語を覚えたら、状況問題で「次に何をするか」を選ぶ練習に移ります。無料模試30問 は全問を日本語と英語で切り替えられるので、訳語と原語を見比べながら解けます。学習の順番は PMP の勉強法 を参考にしてください。
確認問題1
課題とリスクの区別
(当サイトの独自問題)部品の納入業者から、来週の納品が2週間遅れると連絡があった。この遅延はリスク登録簿に「納期遅延の可能性」として載っており、代わりの業者を使う対応策も決まっている。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。遅延はすでに起きた事象なので「課題」です。リスクとして準備していた対応策があるので、それを実行し、課題ログで追います。
1:もう起きているので、新しいリスクとして評価し直す段階ではありません。2:対応策を試す前に完了日の延長を求めるのは早すぎます。4:契約上の対応は、計画済みの対応を実行してから検討します。
確認問題2
スコープが広がった原因
(当サイトの独自問題)予測型のプロジェクトで、開発者が「ユーザーが喜ぶはず」と考え、要求事項にない検索機能を追加していた。顧客や関係者からの要望は出ていない。この状況を表す用語として最も適切なものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:2。頼まれていない機能を、チームが自分の判断で足すのがゴールド・プレーティングです。
1:スコープ・クリープは、顧客などの要望が変更管理を通らずに入り、範囲が広がることです。3:近い作業は詳しく、遠い作業は粗く計画する方法で、範囲の拡大とは関係ありません。4:作業を並行させて期間を縮める手法です。
確認問題3
アジャイルでの優先順位
(当サイトの独自問題)スクラムで進めている開発で、営業部長が開発者に直接「この機能を今のスプリントに入れてほしい」と頼んできた。開発者は困って、プロジェクト・マネジャーに相談した。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。プロダクト・バックログの並び順を決めるのはプロダクト・オーナーです。要望に価値があるかもしれないので、断らずに正しい窓口につなぎます。
1:役職で優先順位を決めると、スプリントの目標が崩れます。2:スプリントの中止は、目標が意味を失ったときにプロダクト・オーナーが決めることです。3:価値の判断と並び順はプロダクト・オーナーの役割で、PM と開発者だけで決めることではありません。