ガントチャートとは?
ガントチャート(Gantt chart)は、プロジェクトの作業を縦に並べ、それぞれの開始日から終了日までを横棒で表した図です。横軸が時間(日・週・月)、縦軸が作業です。棒の長さが期間を表すので、作業の順番と重なりがひと目でわかります。
名前は、20世紀の初めにこの形の図を広めた米国の技術者ヘンリー・ガントに由来します。PMBOK®ガイドの日本語版では「ガント・チャート」と表記されています。
向いているのは、作業の順番と期間がある程度見通せる仕事です。建設、イベントの準備、システムの導入など、締め切りから逆算して進める仕事で広く使われます。Excel やスプレッドシート、プロジェクト管理ツールの多くで作れます。
ガントチャートの書き方は?
次の6つの手順で書きます。
- 作業を洗い出す:成果物を細かく分けた WBS(作業分解構成図)から、必要な作業を一覧にする。大きすぎる作業は、進み具合を確かめられる大きさに分ける。
- 順番(依存関係)を決める:「設計が終わらないと開発を始められない」など、作業の前後の関係を整理する。
- 期間を見積もる:作業ごとに何日・何週かかるかを、過去の実績や担当者の意見をもとに見積もる。
- 担当を決める:作業ごとに担当者を決める。同じ人に、同じ週の作業が重なっていないかも確かめる。
- 棒と矢印を引く:開始日と終了日に合わせて横棒を引き、依存関係のある棒どうしを矢印でつなぐ。
- マイルストーンを置いて合意する:承認やリリースなどの重要な時点を ◆ で示す。関係者と合意したら、その形を基準(スケジュール・ベースライン)として残す。
WBS は「何をやるか」の一覧で、期間は持ちません。ガントチャートは、その作業を「いつやるか」で日付の上に並べたものです。作る順番は、WBS が先です。
実際のガントチャートはどんな形?
例として、10週間の小さなシステム導入プロジェクトを表で表します(■ が作業の期間、◆ がマイルストーン)。この例は、後の説明と確認問題でも使います。
| 作業 | W1 | W2 | W3 | W4 | W5 | W6 | W7 | W8 | W9 | W10 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A 要件定義 | ■ | ■ | ||||||||
| B 設計(A の後) | ■ | ■ | ||||||||
| ◆ 設計承認 | ◆ | |||||||||
| C 開発(B の後) | ■ | ■ | ■ | ■ | ||||||
| D テスト計画(A の後) | ■ | |||||||||
| E テスト(C と D の後) | ■ | ■ | ||||||||
| ◆ リリース | ◆ |
マイルストーンと依存関係はどう表す?
マイルストーンは、期間を持たない「時点」です。そのため棒ではなく、◆ などの記号で表します。上の例では「設計承認」と「リリース」がマイルストーンです。承認や納品など、関係者と約束した区切りに置きます。置き方のコツは マイルストーンとは? で詳しく解説しています。
依存関係は、棒と棒を矢印でつないで表します。最も多いのは、前の作業が終わったら次を始める「終了-開始(FS)」の関係です。ほかに、同時に始める「開始-開始(SS)」、同時に終える「終了-終了(FF)」などがあります。
依存関係を描かないガントチャートは、見た目はきれいでも、ある作業が遅れたときにどこまで影響するかがわかりません。ツールで作るなら、依存関係を設定しておくと、遅れたときに後ろの棒が自動でずれます。
クリティカルパスと余裕はどう見つける?
クリティカルパスは、開始から完了までの作業のつながりのうち、最も長い経路です。この経路上の作業が1日遅れると、完了日も1日遅れます。
上の例では、A(2週)→B(2週)→C(4週)→E(2週)の合計10週がクリティカルパスです。一方、D テスト計画は W3 に終わり、E が始まるのは W9 です。D は完了日を遅らせずに、5週間まで遅らせられます。この遅らせられる幅をフロート(余裕)と呼びます。
ガントチャートは期間を見るのは得意ですが、どれがクリティカルパスかは、依存関係を追わないと見えません。経路ごとの期間の足し方は クリティカルパスとは? で例題つきで解説しています。
進み具合はどう書き込む?(予定と実績の比べ方)
作ったガントチャートは、合意した時点の形を基準として残し、その上に実績を書き込みます。予定の棒と実績の棒を2段に並べるか、棒の中を進んだ割合だけ塗るのが一般的です。読み取りでは、次の3つを使います。
- 今日の線:確認する日に縦線を引く。線より左にある予定の作業は、本来終わっているはずの作業です。
- 進捗線(イナズマ線):各作業の進んだ位置を、今日の線から折れ線でつなぐ。左に折れている作業は遅れ、右に折れている作業は前倒しです。
- ずれの影響:遅れている作業がクリティカルパス上にあるか、余裕の中に収まるかを確かめる。
例のチャートで、W6 の終わりに確認したとします。C 開発(W5〜W8)は、予定では半分(50%)終わっているはずが、実績は25%でした。1週間分の遅れです。C はクリティカルパス上にあるので、手を打たなければリリースも1週間遅れます。
ガントチャートのメリットと弱点は?
強みは「いつ」がひと目でわかることです。弱点は、作業のつながりや人の負荷など、棒の外にある情報が見えにくいことです。弱点は、別の見方で補います。
| 知りたいこと | ガントチャートだけでは | 補う方法 |
|---|---|---|
| いつ何をするか | 最も得意。ひと目でわかる | (そのままでよい) |
| 作業のつながり | 矢印がないと見えない | 依存関係の矢印を描く。ネットワーク図で確かめる |
| クリティカルパスと余裕 | 棒だけでは見えない | 経路の長さを計算する。ツールの強調表示を使う |
| 人の負荷の重なり | 作業が多いと見落とす | 担当者ごとに並べ替える。資源ヒストグラムを見る |
| 変化の多い仕事の見通し | 先まで細かく描くほど崩れる | 近い期間だけ詳しく描く。アジャイルではリリース計画とバックログを使う |
| 経営層への報告 | 作業が多いと細かすぎる | マイルストーンだけの要約版にする |
最後の行のように、見せる相手によって細かさを変えるのも大事です。経営層・顧客・チームなど、ステークホルダー ごとに知りたいことは違います。
PMP試験の図表問題ではどう読む?
ECO 2026年版では、グラフや図を読んで答える「図表問題(Graphic-Based Questions)」が新しく加わりました。Process 領域の「スケジュールを計画・管理する」タスクにも、関係する項目が並んでいます。マイルストーンや依存関係の見積り、スケジュールの基準の設定、スケジュールのずれの分析です。ガントチャートを読むときのチェックポイントは次の5つです。
- 今日の位置:今日の線より左で、終わっていない作業はどれか。
- 依存関係:遅れている作業の後ろに、どの作業がつながっているか。
- クリティカルパスかどうか:遅れが余裕の中に収まれば、完了日には響かない。
- マイルストーン:次の重要な時点に間に合うか。
- 資源の重なり:同じ人が同じ週に複数の作業を抱えていないか。
確認問題1
余裕のある作業の遅れ
(当サイトの独自問題)本文の例のガントチャート(A→B→C→E が10週で、E は W9〜W10 に実施。D テスト計画は A(W1〜W2)の後の W3 に実施。E は C と D の後)で、D の担当者が体調を崩し、D の完了が3週間遅れることになった。ほかの作業に変更はない。プロジェクトの完了日への影響として正しいものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。D は W3 に終わる予定で、E の開始は W9 です。3週間遅れても W6 に終わるので E の開始に間に合い、完了日は変わりません。
1:D はクリティカルパス上になく、3週間の遅れも余裕(5週)の範囲に収まります。2:D が W6 に終わっても E の開始(W9)に間に合うので、E には響きません。3:A→D→E の経路は、D が3週間遅れても合計8週で、A→B→C→E の10週より短いままです。
確認問題2
クリティカルパス上の遅れ
(当サイトの独自問題)週次の確認で、ガントチャートの進捗線から、クリティカルパス上の開発作業が1週間遅れているとわかった。リリース日は顧客と契約で約束している。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:1。クリティカルパス上の遅れは、そのまま完了日に響きます。まず原因を確かめ、ファスト・トラッキング(作業の並行化)やクラッシング(資源の追加)など、約束の日を守る方法を検討します。
2:挽回できるかを検討する前に、約束の日を変えようとしています。3:原因と挽回策を確かめる前に、基準そのものを変えようとしています。4:クリティカルパス上の遅れを1週間放置すると、挽回の選択肢が減ります。
確認問題3
アジャイルでの計画の見せ方
(当サイトの独自問題)アジャイルで開発しているチームに、経営層から「半年分の詳細なガントチャートを出してほしい」と求められた。チームは2週間のスプリントで、優先順位はスプリントごとに見直している。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:3。経営層が知りたいのは、多くの場合「いつ頃、何が使えるようになるか」です。目的を確かめ、リリース計画や大まかなマイルストーンなど、アジャイルに合った形で見通しを示します。
1:優先順位をスプリントごとに見直すので、先の作業を日単位で決めても崩れます。2:要望の目的を確かめず、断る説明で済ませようとしています。4:報告の形式のために進め方を変えるのは本末転倒です。