PMP試験でアジャイルはどれくらい出る?
結論から言うと、問題のおよそ6割がアジャイルかハイブリッドの場面です。
PMIが公開している試験内容の概要(ECO)の2026年版には、アプローチ別の出題の目安があります。予測型が約40%、残りの約60%をアジャイル(適応型)とハイブリッドで分ける、という書き方です。
大事なのは、アジャイルが独立した領域として出るわけではないことです。領域は People 33%・Process 41%・Business Environment 26% の3つです。そのどのタスクにも、予測型・アジャイル・ハイブリッドの場面が混ざります。たとえば People の「対立の管理」が、スプリント途中の開発者どうしの対立として出ることがあります。
つまり、アジャイルを捨てて予測型だけ固める作戦は成り立ちません。逆に、アジャイルの考え方が身につくと、People や Business の問題も解きやすくなります。
- 予測型40
- アジャイル+ハイブリッド60
アジャイルとハイブリッドの内訳は公表されていません。どちらにも備えます。
単位は%。出典:PMI の PMP 試験内容の概要(2026年版)
PMPで出るアジャイルの範囲は?
PMP は特定の手法の試験ではありません。ただ、問題文の場面はスクラムの用語で書かれることが多くあります。かんばんやリーン、XP(エクストリーム・プログラミング)の考え方も出ます。押さえる範囲は次の表のとおりです。
| 分野 | 押さえること | 関連するECOのタスク(例) |
|---|---|---|
| 価値観と原則 | アジャイルソフトウェア開発宣言の4つの価値と12の原則の趣旨 | 全体(判断の土台) |
| スクラムの役割 | プロダクトオーナー・スクラムマスター・開発者の責任の分担 | People 3(チームを率いる) |
| スクラムのイベント | スプリント・プランニング・デイリースクラム・レビュー・レトロスペクティブの目的 | Process 8(スケジュール)、Business 6(継続的改善) |
| 作成物 | プロダクトバックログ・スプリントバックログ・インクリメントと完了の定義(DoD) | Process 2(スコープ)、Process 7(品質) |
| 見積もりと計測 | ストーリーポイント・ベロシティ・バーンダウン/バーンアップ・WIP制限 | Process 8・9(状況の評価) |
| 技術的な実践 | XP のペアプログラミング、テスト駆動開発、継続的インテグレーション | Process 7(品質) |
| 障害と課題 | チームの外にある障害の除去、リスクが課題に変わったときの対応 | Business 4(障害の除去と課題の管理) |
| 価値の届け方 | MVP・段階的なリリース・価値に基づく優先順位 | Process 3(価値に基づく提供) |
| アプローチの選択 | 予測型・アジャイル・ハイブリッドのどれが合うかの判断 | Process 1(統合計画と提供の計画) |
表の下の方は、新ECOで特に目立つ部分です。Process 8 には、見積もりの例として「ストーリーポイント」が明記されています。Process 1 の中身の1つは、開発アプローチの推奨です。アプローチの選び方はアジャイルとウォーターフォールの違いで詳しく扱います。
アジャイル問題はどんな原則で判断する?
アジャイルの状況問題は、次の4つの原則で多くの選択肢を絞れます。
- チームに任せる。 作業の進め方や担当の割り振りは、チーム(開発者)が決めます。PMやスクラムマスターが指示する選択肢は、多くの場合で誤りです。
- 価値の高い順に届ける。 何を先に作るかは、プロダクトオーナーがプロダクトバックログの並び順で決めます。関係者の要望は、まずバックログに入れて並べ直します。
- 早く見せて直す。 完成まで待たずに、スプリントごとに動く成果物を見せてフィードバックを受けます。問題は早く表に出すほど安く直せます。
- 障害を取り除く。 チームの作業を止めている原因(他部署の承認待ち・環境の不足など)を取り除くのは、リーダーの最優先の仕事です。
この4つは、サーバント・リーダーシップ(チームに仕え、支えるリーダーシップ)の考え方とつながっています。
迷ったときの判断の手順は?
4つの原則を当てはめる前に、問題文から場面と責任者を読み取ると迷いが減ります。当サイトでは次の手順をすすめています。
- 1
1. 場面を見分ける
予測型・アジャイル・ハイブリッドのどれか。スプリント・変更管理委員会などの用語が手がかり
- 2
2. 責任者を決める
並び順はプロダクトオーナー、作り方と量は開発者、障害の除去はスクラムマスター(支援役のPM)
- 3
3. 4原則で絞る
任せる・価値の順・早く見せる・障害を外す、に反する選択肢を消す
- 4
4. 時機を確かめる
今すぐ動くか、次のイベント(プランニング・レビュー・レトロスペクティブ)で扱うか
近い選択肢が2つ残ったら、「誰が」「いつ」の違いを比べます。
たとえば「関係者が開発者に直接仕事を頼んでいる」場面なら、要望の窓口はプロダクトオーナーです。時機は「今すぐ、関係者に流れを説明する」になります。
押さえたい役割とイベントは?
スクラムの3つの責任と5つのイベントは、問題文にそのまま出てきます。目的と「誰が中心か」をセットで覚えると、選択肢の正誤が見分けやすくなります。
PMI の『アジャイル実務ガイド』は、アジャイルの共通の役割を3つで説明しています。機能横断チーム・メンバー、プロダクト・オーナー、チーム・ファシリテーターです。チーム・ファシリテーターは、サーバント・リーダーの役です。プロジェクト・マネジャーやスクラムマスターと呼ばれることもあります。PMP の問題で、PM にスクラムマスターに近い行動が求められるのはこのためです。
| 用語 | 目的(要点) | 試験でのポイント |
|---|---|---|
| プロダクトオーナー | プロダクトの価値を最大化し、バックログを並べる | 優先順位の変更はプロダクトオーナーと話す |
| スクラムマスター | スクラムが機能するようにチームと組織を支える | 障害の除去、指示ではなく支援 |
| 開発者 | スプリントごとに使えるインクリメントを作る | タスクの分担や作り方は開発者が決める |
| スプリント | 1か月以内の固定の期間。ほかのイベントを含む入れ物 | 途中でゴールを危うくする変更をしない |
| スプリントプランニング | なぜ・何を・どうやってを決める | スプリントゴールを全員で合意する |
| デイリースクラム | 開発者がゴールへの進み具合を確かめ計画を直す15分 | 問題解決は会議の後に別に行う |
| スプリントレビュー | 成果を関係者と検査し、次に何をするかを話し合う | フィードバックはバックログに反映 |
| スプリントレトロスペクティブ | チームの進め方を見直し改善を決める | 改善は次のスプリントで実行する |
問題文が予測型・アジャイル・ハイブリッドのどれの場面かは、PMP問題のアプローチの見分け方で詳しく扱います。
予測型の常識で間違えるのはどんな問題?
PMP の受験者には予測型の経験が長い人が多く、その常識が誤答の原因になりがちです。代表的な例を4つ挙げます。
- 変更要求の扱い: 予測型では、変更要求を変更管理委員会(CCB)にかけます。アジャイルの場面では、新しい要望はプロダクトバックログに入れ、プロダクトオーナーが並べ直すのが基本です。問題文がハイブリッドで正式な変更管理を求めていない限り、いきなり CCB にかける選択肢は外れです。
- 作業の割り当て: 予測型では、PM が担当を決めることがあります。アジャイルでは、開発者が自分たちで作業を選びます。「PM が作業を割り当てる」は誤りの典型です。
- 進捗の確認: 予測型では、PM が個別に状況を聞いて回ります。アジャイルでは、情報ラジエーター(誰でも見られる掲示物)で進み具合を共有します。かんばんボードやバーンダウンチャートが代表です。
- デイリースクラムの使い方: 予測型の進捗会議のように、開発者が PM に報告する場にしがちです。デイリースクラムは、開発者がゴールへの計画を直す場です。問題の解決は会議の後に別に行います。
反対に、アジャイルを過大に評価して「すべてチームに任せて何もしない」選択肢を選ぶのも誤りです。チームが自力で解けない障害や、組織の規則に関わる問題は、PMやスクラムマスターが動きます。この線引きは、タスク別ドリルで場面を変えて何度も解くと身につきます。
何で勉強する?(教材と進め方)
教材は、まず次の2つが土台になります。
- スクラムガイド(2020年版): スクラムの考案者による公式の説明です。日本語版もあり、無料で読めます。役割・イベント・作成物の定義を確かめる辞書として使います。
- アジャイル実務ガイド: PMI と Agile Alliance が共同で作った実務ガイドです(2017年。日本語版あり)。適合性フィルター、サーバント・リーダーシップ、ハイブリッド、計測などを PMI の言葉で説明しています。
ただし、ECO 自体が、PMP 試験は特定の1冊に沿って作られたものではないと明記しています。1冊を暗記するより、状況問題を解いて「どの原則に反したか」を書き出す方が得点につながります。勉強の全体の計画はPMPの勉強方法にまとめています。
確認問題1
スプリント途中で届いた新しい要望
(当サイトの独自問題)スクラムで開発を進めているチームに、営業部長から新しい機能の要望が届きました。部長は「次のリリースに必ず入れてほしい」と言っています。開発者の一人は、今のスプリントに追加しようとしています。スプリントは残り1週間です。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:2。新しい要望はプロダクトバックログに入れ、プロダクトオーナーが価値に基づいて並べ直します。今のスプリントのゴールは守ります。
1:スプリントゴールを危うくする変更を、スプリントの途中に入れることになります。並び順を決めるのも開発者ではありません。3:アジャイルの場面で、いきなり正式な変更管理委員会にかける必要はありません。4:スプリントを中止できるのはプロダクトオーナーだけで、ゴールが意味を失った場合に限られます。
確認問題2
進み具合を何度も聞いてくる関係者
(当サイトの独自問題)アジャイルのチームで、複数の部署の管理職が、開発者へ毎日のようにチャットで進み具合を聞いてきます。開発者は「作業が何度も中断される」と困っています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:4。情報ラジエーター(タスクボード・バーンダウンチャート)を公開すれば、関係者は開発者を中断せずに状況を知れます。透明性を高めつつ、チームを割り込みから守る行動です。
1:次のレビューまで情報が届かず、透明性が下がります。2:デイリースクラムは開発者が計画を直す場で、管理職への報告会ではありません。3:PMの手作業が増え、情報も古くなりがちです。
確認問題3
チームの外にある障害
(当サイトの独自問題)デイリースクラムで、開発者が次のように報告しました。「テスト環境の利用申請が情報システム部で2週間止まっていて、テストを始められない」。チームは何度か問い合わせましたが、返事がありません。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:1。チームの力では外せない組織の障害を取り除くのは、リーダーの最優先の仕事です。すでに起きている問題なので、すぐに動きます。
2:チームが試しても解けなかった外部の障害を、チームに戻すのは支援になりません。3:記録は必要ですが、月次の運営委員会まで待つのは遅すぎます。4:完了の定義(DoD)を満たさない作業が積み上がり、品質のリスクが増えます。
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