スクラムマスターとは?
スクラムマスターは、スクラムの3つの責任(プロダクトオーナー・スクラムマスター・開発者)の1つです。スクラムガイド(2020年版)では、スクラムチームの有効性に責任を持つ人とされています。スクラムの理論と実践を、チームと組織の全員が理解できるよう助けます。
名前に「マスター」と付きますが、チームの上司ではありません。作業の中身や担当を決める権限は持たず、チームが自分たちで決めて成果を出せるよう支えます。
2017年版のスクラムガイドでは「サーバントリーダー」と書かれていました。2020年版では「チームと組織に仕える真のリーダー」に表現が変わりましたが、考え方は同じです。スクラム全体の中での位置づけはスクラムとは?で図にしています。
スクラムマスター
スクラムチーム
自己管理を育て、障害の除去を促し、イベントを有意義にする
プロダクトオーナー
ゴールの示し方やバックログの管理の技法を一緒に探す
組織
スクラムの導入を手引きし、関係者とチームの間の壁を減らす
チームに対して何をする?
スクラムマスターがチームに対して行う支援は、次のとおりです(スクラムガイドの記載を当サイトが要約)。
- 自己管理と機能横断を育てる: 何を誰がどうやるかを、チームが自分たちで決められるようにコーチします。
- 完了の定義(DoD)を満たす成果に集中させる: 価値のある、完成したインクリメントを作ることに目を向けさせます。
- 障害の除去を促す: チームの進み具合を妨げているものを取り除くよう働きかけます。チームが自分で外せるものはチームに任せ、組織の壁など外せないものは自ら動きます。
- イベントを有意義にする: スクラムのイベントが開かれ、前向きで生産的に、時間内に終わるようにします。
ポイントは「代わりにやる」のではなく「できるようにする」ことです。たとえば、デイリースクラムを毎回スクラムマスターが仕切る必要はありません。開発者が自分たちで運営できるようになるのが理想です。
プロダクトオーナーに対して何をする?
スクラムマスターは、プロダクトオーナーの仕事が効果的に進むよう支えます。スクラムガイドが挙げる支援を要約すると、次の4つです。
- プロダクトゴールの示し方や、プロダクトバックログの管理の技法を一緒に探す
- 明確で簡潔なアイテムがなぜ必要かを、チームが理解できるよう助ける
- 変化の多い環境で、経験にもとづいてプロダクトを計画することを支える
- 必要に応じて、関係者との協働を促す
ただし、優先順位を決めるのはプロダクトオーナーです。スクラムマスターが「この機能を先に」と決めることはありません。プロダクトオーナーの責任はプロダクトオーナーの役割で詳しく扱います。
組織に対して何をする?
スクラムマスターは、チームの外にも働きかけます。スクラムを導入する組織を手引きし、研修やコーチングを行います。導入の計画に助言し、関係者が経験的な進め方を理解できるよう助けます。関係者とチームの間の壁を取り除くのも仕事です。
PMP の問題では、ここが特に大事です。チームの作業が止まる原因が、組織の規則や他部署の手続きにあることがあります。そのときは、スクラムマスター(または支援役のPM)が組織に働きかけて解決します。チームに「自分たちで何とかして」と返すのは誤りです。
スクラムのイベントではどう関わる?
スクラムマスターはイベントの司会者ではありません。イベントが開かれ、目的に沿って、時間内に終わるように支えます。イベントごとに整理すると次のとおりです。
| イベント・活動 | スクラムマスターがすること | しないこと |
|---|---|---|
| スプリントプランニング | なぜ・何を・どうやってが時間内に決まるよう、進め方を支える | 選ぶ量を決める、担当を割り振る |
| デイリースクラム | 開かれ、15分で終わるよう支える。運営は開発者に任せる | 進捗の報告を受ける場にする |
| スプリントレビュー | 関係者が参加し、成果を検査して次を話し合えるよう働きかける | デモの発表会だけで終わらせる |
| スプリントレトロスペクティブ | 安心して話せる場をつくり、改善が実行されるよう支える | 問題をメンバー個人の責任にする |
| リファインメント(継続的な活動) | アイテムの分け方や見積もりの技法を教える | 並び順や大きさを代わりに決める |
スクラムマスターがいないとイベントが回らない状態は、まだ途中です。チームが自分たちで回せるようになれば、スクラムマスターは組織の壁に時間を使えます。
PM・プロダクトオーナーとの違いは?
スクラムガイドには「プロジェクト・マネジャー」という役割はありません。予測型のプロジェクト・マネジャー(PM)、スクラムマスター、プロダクトオーナーを比べると、次のようになります。
| 観点 | 予測型のPM | スクラムマスター | プロダクトオーナー |
|---|---|---|---|
| 主な責任 | スコープ・スケジュール・コストの目標を達成する | スクラムが機能し、チームの有効性が高まるようにする | プロダクトの価値を最大にする |
| 作業の割り当て | 担当を決めることがある | しない。開発者が決める | しない。開発者が決める |
| 優先順位 | 計画と変更管理で決める | 決めない | 決める(バックログの並び順) |
| 進捗の把握 | 計画との差を測り、是正する | 情報を見える化し、チームの自己調整を助ける | インクリメントを検査し、次の並び順に生かす |
| リーダーシップ | 状況に応じて指示型も使う | 支援・コーチング・ファシリテーション | 関係者との調整と意思決定 |
PMI の『アジャイル実務ガイド』は、アジャイルの共通の役割を3つで説明しています。機能横断チーム・メンバー、プロダクト・オーナー、チーム・ファシリテーターです。チーム・ファシリテーターは、サーバント・リーダーの役です。プロジェクト・マネジャーやスクラムマスターなどと呼ばれることもあります。
PMP は「プロジェクト・マネジャー」の試験ですが、アジャイルの場面の PM はこの支援役として振る舞います。指示より質問、統制より見える化、代わりにやるより障害を外す、です。リーダーシップの型全体はチームを率いるリーダーシップで整理しています。
よくある落とし穴は?
- 会議の司会だけをする: イベントを仕切ることが仕事だと思い込み、チームの外の障害に目が向かない。
- 雑用係になる: 議事録や調整をすべて引き受け、チームが自分で回す力が育たない。
- ルールを押し付ける: スクラムガイドの文面だけで正誤を判定し、なぜそうするのかを一緒に考えない。
- 指示役に戻る: 遅れが出ると担当や手順を指示してしまい、自己管理を弱める。
- チームの中だけを見る: 組織の規則や他部署の手続きなど、チームだけでは外せない壁を放っておく。
PMP の状況問題に当てはめると、どれも誤りになる行動です。スクラムマスターの資格(CSM・PSM など)と PMP の違いは、スクラムマスターの資格を比較で扱います。
PMP試験で正解になる行動・誤りの典型は?
| 場面 | 正解になりやすい行動 | 誤りの典型 |
|---|---|---|
| チーム内の意見の対立 | 対話の場を設け、チームが自分たちで解決できるよう促す | PMがどちらが正しいか決める |
| チーム外の障害 | 関係部署と調整し、障害を取り除く | チームに任せて待つ |
| 関係者の割り込み | プロダクトオーナーとバックログに誘導する | 開発者がその場で引き受ける |
| イベントの形骸化 | 目的を確認し、チームと進め方を見直す | イベントを省略する |
| チームの生産性の低下 | レトロスペクティブで原因をチームと探る | 人を入れ替える・残業を指示する |
迷ったら、「この選択肢はチームの自己管理を強めるか、弱めるか」を考えます。それだけで、多くの選択肢を絞れます。
確認問題1
開発者どうしの技術的な対立
(当サイトの独自問題)スクラムチームの開発者2人が、データベースの設計の方針で対立しています。どちらの案にも一長一短があり、議論が3日続いて作業が少し遅れ始めました。2人はPMに「どちらが正しいか決めてほしい」と頼んできました。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。作り方はチーム(開発者)が決めるものです。PMは判断の基準を整理し、話し合いを進行する支援役になります。
1:作り方をPMが決めると、チームの自己管理を弱めます。2:対立の原因を解かずに先送りしています。4:技術的な作り方は、プロダクトオーナーではなく開発者の責任です。
確認問題2
購買部の承認が遅い
(当サイトの独自問題)アジャイルのチームが、開発に必要なソフトウェアのライセンスを購買部に申請しました。購買部の手続きは通常3週間かかり、このままでは次の2つのスプリントの作業が進みません。チームはすでに購買部に事情を説明しましたが、例外は認められませんでした。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:1。チームが試しても外せない組織の障害は、リーダーが組織に働きかけて取り除きます。スポンサーの協力を得るのも有効です。
2:チームが外せないと分かった障害を、チームに戻しても解決しません。3:2スプリント分の作業が止まる問題を、次のふりかえりまで待つのは遅すぎます。4:チームを崩すと、スプリントの流れと学びが失われます。
確認問題3
関係者が開発者に直接仕事を頼む
(当サイトの独自問題)マーケティング部の課長が、スクラムチームの開発者に小さな修正を直接頼むことが続いています。依頼はいつも「今日中にお願い」です。開発者は断りにくく、スプリントゴールの作業が遅れ始めました。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。関係者の要望は、プロダクトオーナーを通してプロダクトバックログで扱います。課長に流れを説明し、チームを割り込みから守るのが支援役の仕事です。
1:割り込みを認めるルールになり、スプリントゴールを守れません。2:割り込みを仕組みにしてしまいます。3:まず本人と話して流れを説明するのが先です。いきなり上司に頼むと、関係を悪くします。
PMとスクラムマスターの行動の違いが問われる問題は、タスク別ドリルの People のタスクで繰り返し練習できます。