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PMP STUDY GUIDEBusiness Environment(ビジネス環境)の論点PMP

リスク対応策の種類|回避・転嫁・軽減・受容の違いと選び方をPMP向けに整理

リスク対応策の種類を、脅威(回避・転嫁・軽減・受容・エスカレーション)と好機(活用・共有・強化など)に分けて例で整理。選び方と費用対効果の計算例、「低減・移転・保有」との対応、確認問題3問つき。

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約9分
執筆
プロマネ模試 編集部
まず結論

この記事の要点

  • 脅威(悪い影響のリスク)への対応は、回避・転嫁・軽減・受容・エスカレーションの5つです。
  • 好機(よい影響のリスク)への対応は、活用・共有・強化・受容・エスカレーションの5つで、脅威の対応と対になっています。
  • 選ぶときは、権限の範囲・優先度・費用対効果・だれが扱うのが得意か、を順に見ます。減らせる損失の見込みが対応の費用を上回れば、割に合います。
  • 一般のリスク管理でいう「低減・移転・保有」は、PMP の「軽減・転嫁・受容」に当たります。

脅威への対応策は?(回避・転嫁・軽減・受容・エスカレーション)

脅威(プロジェクトに悪い影響を与えるリスク)への対応は、次の5つの型で考えます。

当サイトの整理
対応策やること例
回避計画を変えて、リスクそのものをなくす不安定な新技術を使わず、実績のある技術に変える
転嫁影響と対応の責任を第三者に移す(リスクそのものは消えない)保険をかける、固定価格の契約で外部に任せる
軽減確率か影響、または両方を下げる試作で早く確かめる、人を二重に配置する
受容手を打たずに受け入れる(起きたら対処)影響が小さいので見守る、予備費を確保しておく
エスカレーションプロジェクトの権限の外のリスクを、適切な上位に渡す全社の基盤に関わるリスクを、担当部門や経営層に上げる

受容には2種類あります。何もせず起きたら対処する消極的な受容と、予備費や時間の余裕を確保しておく積極的な受容です。時間の余裕は、作業ごとにこっそり上乗せすると使い切られやすくなります。余裕は見える形でまとめて管理します(パーキンソンの法則)。

エスカレーションは、プロジェクトの権限の外にあるリスクに使います。上げた後は、上位の組織がそのリスクを引き受けたことを確かめます。プロジェクトの登録簿にも記録を残します。

好機への対応策は?(活用・共有・強化・受容)

好機(よい影響を与えるリスク)への対応は、脅威の対応と対になっています。

脅威と好機の対応策の対応関係

脅威

  • 確実にする/なくす回避:確実に起きないようにする
  • 第三者を使う転嫁:第三者に移す
  • 大きさを変える軽減:確率・影響を下げる
  • 受け入れる受容:受け入れる
  • 上位に渡すエスカレーション:上位に渡す

好機

  • 確実にする/なくす活用:確実に起きるようにする
  • 第三者を使う共有:力のある第三者と組む
  • 大きさを変える強化:確率・影響を上げる
  • 受け入れる受容:起きたら受け取る
  • 上位に渡すエスカレーション:上位に渡す

当サイトの整理

例を挙げます。活用:腕のよい技術者を確実に割り当て、工期の短縮を確実にする。共有:自社だけでは取れない大型案件を、他社と共同で受注する。強化:早く終わりそうな作業に人を足して、前倒しの可能性を高める。受容:好機が起きたら利益を受け取るが、特に手は打たない。

「低減・移転・保有」とはどう対応する?

情報セキュリティ(ISMS)や企業のリスク管理の解説では、リスク対応を「回避・低減・移転・保有」の4つで説明することが多いです。PMP の用語とは次のように対応します。

当サイトの整理
一般のリスク管理PMP(PMBOK)補足
回避回避同じ。リスクのもとになる活動や計画をやめる・変える
低減軽減確率か影響、または両方を下げる
移転(共有)転嫁保険や契約で、影響を第三者に移す。PMP の「共有」は好機の戦略
保有(受容)受容手を打たずに受け入れる。予備費を用意するのは積極的な受容
(区分なし)エスカレーションプロジェクトの権限の外のリスクを、上位の組織に渡す

呼び方が違っても、考え方はほぼ同じです。PMP では、これに加えてエスカレーションと好機向けの戦略が問われます。ほかの資格や社内の規程で覚えた言葉と混ざらないよう、一度対応を確かめておきましょう。

対応策はどう選ぶ?

選ぶときは、次の順で考えると迷いにくくなります。

  1. プロジェクトの権限の中か? 外ならエスカレーション。
  2. 優先度は高いか? 確率と影響が大きい脅威は、回避や軽減を検討します。小さいものは受容でよいことが多いです。
  3. 費用は見合うか? 対応で減らせる損失より費用が大きいなら、割に合いません。
  4. だれが一番うまく扱えるか? 専門の第三者のほうがうまく扱えるなら転嫁(好機なら共有)。
  5. 関係者が受け入れられるか? 選んだ対応策は、リスクのオーナーと関係者の合意を得ます。

対応策が割に合うかはどう計算する?

3つ目の「費用は見合うか」は、期待金額価値(EMV:確率×影響で出す損失の見込み額)を使うと数字で比べられます。架空の例で確かめます。

軽減策が割に合うかの計算例

減らせる損失の見込み = 対応前の確率×影響 − 対応後の確率×影響

  1. 1対応前:発生確率20%、影響500万円 → 0.2 × 500 = 100万円
  2. 2対応後:試作で確率を5%に下げる → 0.05 × 500 = 25万円
  3. 3減らせる損失の見込み:100 − 25 = 75万円
  4. 4試作の費用30万円と比べる:75万円 > 30万円

割に合う(見込みで差し引き45万円の得)

当サイトの架空の例

試作の費用が75万円を超えるなら、この軽減策は割に合いません。別の対応策か、予備費を用意する積極的な受容を検討します。

確率と影響の見積もり方は、定性的リスク分析と定量的リスク分析の違いで扱います。受容のための予備費は、コンティンジェンシー予備とマネジメント予備の違いで詳しく説明しています。

対応策を決めたら、何を記録する?

対応策は、決めただけでは動きません。リスク登録簿に次のことを書き、実行できる状態にします。

  • 選んだ対応策の型と、具体的な行動(何を、いつまでに)
  • リスクのオーナー(対応を進める責任者)
  • 対応にかかる費用と時間。計画やベースラインに入れる必要があるか
  • トリガー(対応を始める合図になる兆候)
  • 対応策が効かなかったときの代わりの計画

費用や時間がかかる対応策は、計画に組み込みます。たとえば軽減のための試作は、スケジュールに作業として入れます。計画に入らない対応策は、忙しくなると後回しにされがちです。

リスクが実際に起きたときの動き方は、リスクと課題の違いで扱います。

二次リスクと残存リスクとは?

対応策を実施しても、リスクの話は終わりません。

  • 二次リスク:対応策を実施したことで、新しく生まれるリスク。例:遅れを防ぐために外部の業者を追加した結果、「業者の品質が基準に届かない」リスクが生まれる。
  • 残存リスク:対応策を実施した後も残るリスク。例:試作で技術を確かめても、本番の規模で問題が出る可能性は少し残る。

どちらもリスク登録簿に記録し、分析と対応の対象にします。残存リスクには、受容のための予備費を確保しておくことが多いです。対応策が効かなかったときに備えて、代わりの計画(フォールバック計画)を決めておくこともあります。

2026年版ECOでリスク対応はどう扱われる?

2026年版のECOは、Business5 のイネーブラーに「リスクマネジメント計画を実行する」を挙げています。例として書かれているのは、セキュリティのリスク対応と、サステナビリティのリスクの管理です。旧版(2021年版・Process3)は「リスクマネジメントの選択肢を決める」まででした。対応を選ぶだけでなく、実行するところまでが明記されたことになります。

セキュリティやサステナビリティのように、新しく例示されたテーマのリスク対応も問われる可能性があります。

PMP試験ではリスク対応がどう問われる?

状況問題で押さえたい型は次のとおりです。

  • 例から対応策の名前を当てる:保険は転嫁、計画の変更でリスクをなくすのは回避、など。
  • 状況に合う対応策を選ぶ:プロジェクトの外のリスクにはエスカレーション、小さなリスクには受容。
  • 対応後の扱い:二次リスクや残存リスクを登録して管理する選択肢を選ぶ。
  • 転嫁の誤解:転嫁してもリスクは消えません。相手が責任を果たすかを見守る必要があります。

名前を覚えるだけなら簡単ですが、状況問題では「どれも当てはまりそう」に見えます。タスク別ドリルの Business5 で、状況から対応策を選ぶ練習をしておくと本番で迷いにくくなります。

確認問題1

組織全体に関わるリスク

(当サイトの独自問題)社内システムの開発中に、PM は全社的な通信障害が起きる可能性に気づきました。原因は、会社の基幹ネットワークの老朽化です。ネットワークは情報システム部門の管理で、プロジェクトの予算や権限では手を出せません。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:4。プロジェクトの権限の外にあるリスクなので、エスカレーションが適切です。担当の部門がリスクを引き受けたことを確かめ、プロジェクトの登録簿にも記録します。

1:プロジェクトの権限と予算の範囲を超えます。2:記録と監視だけでは、リスクを扱える部門に伝わりません。3:予備費を増やしても、全社のリスクそのものは扱えません。

確認問題2

対応策が生んだ新しいリスク

(当サイトの独自問題)重要な作業の遅れを防ぐため、PM は承認を得て外部の業者を追加しました。ところがその後、追加した業者がこちらのセキュリティ方針に慣れておらず、情報の扱いに不安があることが分かりました。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:2。対応策の実施によって新しく生まれたリスクは二次リスクです。まず登録して分析し、研修や契約の条件などの対応を決めます。

1:PM の権限で扱えるリスクの判断を、スポンサーに上げています。まず二次リスクとして登録し、PM が対応を決めます。3:分析の前に対応を決めています。研修で足りるかは、分析しないと分かりません。4:元の遅れのリスクが復活します。

確認問題3

保険をかける(用語)

(当サイトの独自問題)屋外での大型イベントのプロジェクトで、悪天候による中止に備え、損失を補償する保険に加入しました。この対応策として最も適切な名前はどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:3。保険は、リスクが起きたときの金銭的な影響を第三者(保険会社)に移すので、転嫁です。悪天候が起きる確率そのものは変わりません。

1:回避なら、屋内に会場を変えるなどリスクそのものをなくします。2:軽減なら、雨天用のテントを用意するなど影響を下げます。4:受容なら、特に手を打たずに受け入れます。

よくある質問

回避と軽減の違いは?

回避は計画を変えてリスクそのものをなくすことです。軽減はリスクを残したまま、起きる確率や影響を小さくすることです。

転嫁すればリスクはなくなりますか?

なくなりません。影響と対応の責任の一部を第三者に移すだけです。相手が責任を果たせないリスクも残るので、契約や監視で確かめる必要があります。

「低減」「移転」「保有」はPMPの用語と違うのですか?

呼び方が違うだけで、考え方はほぼ同じです。低減は軽減、移転は転嫁、保有は受容に当たります。PMP では、エスカレーションと好機向けの戦略(活用・共有・強化)もあわせて押さえます。

出典・参考

  1. [1]PMI: PMP Examination Content Outline(2026年版・PDF)
  2. [2]PMI: PMP Examination Content Outline(2021年版・PDF)

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