サンクコストの意味は?
サンクコスト(sunk cost)は、日本語で「埋没原価」「埋没費用」と訳されます。すでに支払ってしまい、これからどんな判断をしても取り戻せない費用のことです。sunk は「沈んだ」という意味で、海に沈んで戻ってこないお金をイメージするとわかりやすいです。
身近な例で考えます。2,000円で映画のチケットを買い、見始めて30分で「つまらない」と感じたとします。ここで「2,000円払ったのだから最後まで見よう」と考えるのは、サンクコストにとらわれた判断です。2,000円は、見続けても途中で帰っても戻りません。判断の材料にすべきなのは、「残りの時間を映画に使うか、ほかのことに使うか」だけです。
サンクコスト効果(コンコルド効果)とは?
サンクコスト効果は、すでに使った費用や時間、労力を惜しんで、損だとわかっていても続けてしまう心理の傾向です。
「コンコルド効果」とも呼ばれます。英仏が共同で開発した超音速旅客機コンコルドは、開発の途中で採算が合わないと見られていました。それでも、それまでの巨額の投資を理由に開発と運航が続けられたとされ、この心理の代表例として語られています。
プロジェクトでは、次のような形で現れます。
- 「もう1億円使ったので、今さら止められない」
- 「2年もかけてきたのだから、最後までやり遂げたい」
- 「ここで止めたら、これまでの努力が無駄になる」
どれも気持ちとしては自然ですが、すでに使った1億円や2年間は、続けても止めても戻ってきません。判断を誤らせる原因になります。判断や見積もりをゆがめる心理には、ほかに パーキンソンの法則と学生症候群 などもあります。
プロジェクトの継続・中止はどう判断する?
継続か中止かの判断では、これから先の費用と、これから得られる価値(便益)だけを比べます。数値例で見てみます。
継続の損益 = これから得られる便益 - これから先にかかる費用
- 1すでに使った費用:3,000万円(サンクコスト。判断に入れない)
- 2完成までにこれからかかる費用:2,000万円
- 3完成後に見込める便益:1,500万円
- 4継続の損益 = 1,500万円 - 2,000万円 = -500万円
- 5中止した場合の損益:0円(すでに使った3,000万円は、どちらでも戻らない)
継続すると500万円の損。費用の面だけなら、中止して資源を別の機会に回す方がよい。
検算:1,500-2,000=-500。「すでに3,000万円使った」は、継続でも中止でも同じなので、比較の結果を変えません。
実際の判断では、契約上の違約金、撤退にかかる費用、評判への影響など、これから発生する費用や影響も比べます。これらはサンクコストではないので、判断に入れます。プロジェクトが生み出す価値の考え方は 価値の提供 で詳しく扱っています。
また、継続か中止かを決めるのは、多くの場合スポンサーやガバナンスの会議体です。PM の役割は、判断に必要な情報(これからの費用・便益・リスク)を整理して示すことです。
機会費用とはどう違う?
サンクコストと一緒に覚えたいのが機会費用です。
| サンクコスト | 機会費用 | |
|---|---|---|
| 意味 | すでに使って戻らない費用 | ある選択をしたことで、あきらめた別の選択肢から得られたはずの利益 |
| 時間の向き | 過去 | これから(選ばなかった未来) |
| 判断での扱い | 判断に入れない | 判断に入れる |
| 例 | すでに支払った開発費 | A案を選んだときに、あきらめた B案の利益 |
PMP 試験で出る典型的な例です。プロジェクト A(見込み利益500万円)と B(見込み利益300万円)のどちらか一方しか選べないとします。このとき A を選ぶ機会費用は、あきらめた B の300万円です。選択肢が3つ以上なら、選ばなかったものの中で最も価値の高いものが機会費用になります。
サンクコストに引きずられないための仕組みは?
「判断に入れない」と頭でわかっていても、人は使った費用を惜しみます。気持ちに頼らず、仕組みで防ぐのが確実です。
- 撤退の条件を前もって決める:プロジェクトを始めるときに、「売上の見込みが一定の水準を下回ったら見直す」など、継続を見直す条件を決めておく。
- 節目ごとに継続を判断する:フェーズの終わりなどで、これからの費用と便益を見直す。続けるかどうかは、スポンサーや運営委員会(ステアリング・コミッティ)が決める。
- 比べる表から過去の費用を外す:比較の表には、これからの費用・便益・リスクだけを並べる。使った費用は参考として別に書く。
- 始めた人だけで決めない:始めた本人は引き返しにくいので、第三者の目を入れる。
- 中止を失敗扱いしない:早く止めた判断を評価し、学びを教訓として残す。
プロジェクトを始める根拠と、途中での見直し方は ビジネスケースとは? で解説しています。
PMP試験ではどう問われる?
ECO 2026年版の Process 領域「価値に基づく提供を確実にする」タスクには、プロジェクト全体を通して事業上の価値を確かめることが含まれています。サンクコストは次のような形で出ます。
- 用語問題:プロジェクトの選定や継続の判断で考慮しない費用はどれか → サンクコスト。
- 状況問題:価値が見込めなくなったプロジェクトで、スポンサーが「ここまで使ったから続けたい」と言う → これからの費用と便益を示し、判断を助ける。
- 計算問題:機会費用を求める、サンクコストを除いて比較する。
価値が出ないとわかった時点で、チームが頼まれていない追加をしていた場合の扱いは ゴールドプレーティングとは? を参考にしてください。継続判断の状況問題は 無料模試30問 でも練習できます。
確認問題1
続けたいスポンサー
(当サイトの独自問題)新製品の開発プロジェクトで、競合が先に似た製品を安く出したため、売上の見込みが大きく下がった。分析すると、完成までの残りの費用が、見込める利益を上回っている。スポンサーは「すでに予算の7割を使ったので続けたい」と言っている。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:2。すでに使った7割の予算はサンクコストで、判断に入れません。PM は、これからの費用と便益を整理し、スポンサーが正しく判断できるようにします。
1:判断の材料を示さないまま、価値の見込めない計画を続けています。3:中止の判断は通常、スポンサーやガバナンスの権限です。4:サンクコストを取り戻そうとする発想で、さらに損を広げるおそれがあります。
確認問題2
機会費用の計算
(当サイトの独自問題)会社は、限られた予算で次の3つのプロジェクトから1つだけを選ぶ。見込みの利益(正味現在価値)は、X が800万円、Y が650万円、Z が400万円である。X を選んだ場合の機会費用はいくらか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:4。機会費用は、あきらめた選択肢のうち最も価値の高いものです。X を選ぶとあきらめるのは Y と Z で、高い方の Y の650万円が機会費用です。
1:800-650 の差で、機会費用ではありません。2:Z の値で、最も高い選択肢ではありません。3:Y と Z の合計ですが、1つしか選べないので合計はしません。
確認問題3
判断に入れない費用
(当サイトの独自問題)プロジェクトを継続するか中止するかを判断する際に、考慮に入れるべきでない費用はどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:1。外注先にすでに支払った費用は、継続しても中止しても戻らないサンクコストです。
2:中止した場合にこれから発生する費用なので、判断に入れます。3・4:継続した場合にこれから発生する費用なので、判断に入れます。