ステアリングコミッティとは?
ステアリングコミッティ(steering committee)は、プロジェクトの進む方向を決める会議体です。「ステアリング」は車のハンドルのことで、プロジェクトのかじ取りをする委員会という意味です。「ステアリング・コミッティ」と書かれることや、略して「ステコミ」と呼ばれることもあります。
PMBOK®ガイド第8版の日本語版では、運営委員会と訳されています。当サイトの問題集もこの訳にそろえているので、この記事でも以後は「運営委員会」と書きます。
運営委員会は、大きなプロジェクトや、複数の部門にまたがるプロジェクトで置かれます。プロジェクト・マネジャー(PM)が日々の運営を担い、運営委員会はPMの権限を超える判断と大きな方向づけを担う、という分担です。
2026年版の出題範囲(ECO)には、ガバナンスを決めることがタスクとして入っています(Business Environment 1)。構造・規則・報告を定め、エスカレーションの経路としきい値を決めることです。運営委員会は、このガバナンスの中心になる仕組みです。
運営委員会のメンバーと役割は?
メンバーは、プロジェクトの結果に責任を持ち、判断する権限を持つ人で構成します。
| メンバー | 主な役割 |
|---|---|
| スポンサー | 議長を務めることが多い。プロジェクトの目的と事業の根拠に責任を持つ |
| 関係部門の責任者 | 自部門の人・予算・業務への影響を判断し、協力を約束する |
| 顧客・利用部門の代表 | 成果を使う側として、要求の優先順位を判断する |
| PMOの代表 | 組織の標準や、他のプロジェクトとの調整を担う(置かれている場合) |
| プロジェクト・マネジャー | 状況を報告し、判断が必要な事項を提案する。事務局を兼ねることも多い |
運営委員会は何を決める?
運営委員会が担う主な判断は、次のとおりです。どれも、PM1人の権限では決められないものです。
- フェーズの区切りで、次へ進むか・止めるかを決める
- PMのしきい値を超えるスコープ・スケジュール・予算の変更を承認する
- 部門をまたぐ資源の取り合いや、優先順位の衝突を解決する
- 事業の環境が変わったとき、プロジェクトの方向を見直す
スポンサー・変更管理委員会・PMOとはどう違う?
似た役割を持つものと比べると、違いがはっきりします。
スポンサー
- 形個人
- 主な責任目的・資金・事業の根拠
- 関わる頻度PMの後ろ盾として日常的に支える
運営委員会
- 形複数の責任者の会議体
- 主な責任方向づけと、PMの権限を超える判断
- 関わる頻度定期的(月1回など)+必要なとき
変更管理委員会(CCB)
- 形変更を審査する会議体
- 主な責任変更要求の承認・却下
- 関わる頻度変更要求が出たとき
PMO
- 形組織の部門
- 主な責任標準の整備、支援、プロジェクト間の調整
- 関わる頻度組織として常に
当サイトの整理。小さな組織では、スポンサーや運営委員会がCCBの役割を兼ねることもあります。
スポンサーは1人の責任者、運営委員会は複数の責任者の合議です。スポンサーはふだんからPMを支え、運営委員会は決められた周期で集まって大きな判断をします。スポンサーが運営委員会の議長を務め、両方の顔を持つことも珍しくありません。
PMOは判断する会議体ではなく、プロジェクトを横から支える組織です。運営委員会の資料づくりや、複数のプロジェクトの状況の取りまとめを手伝うことがあります。
エスカレーション先としてどう使う?
運営委員会は、PMのエスカレーション先です。ただし、何でも上げてよいわけではありません。上げる基準と経路は、プロジェクトの最初にガバナンスとして決めておきます。
- 1
問題の発見
事実と影響を確かめる
- 2
PMの権限内で対応
しきい値の内側なら、PMとチームで解決
- 3
しきい値を超える
例:予算の10%を超える変更、主要マイルストーンの遅れ
- 4
選択肢と推奨案を準備
影響の分析、複数の案、PMの推奨
- 5
運営委員会で判断
決定を記録し、計画に反映する
しきい値の数字は架空の例です。実際の値は、プロジェクトごとに決めます。
上げるときに大切なのは、問題だけを持っていかないことです。「どうしましょう」と聞くのではなく、影響の分析と選択肢、PMとしての推奨案をそろえます。委員会のメンバーは時間が限られているので、判断に必要な情報を短くまとめます。
遅れを取り戻す日数を示すときは、根拠のない余裕を積み増さないことも大切です。余裕は、あるだけ使い切られやすいからです(パーキンソンの法則)。
どこまでをPMが決め、どこからを上げるかの考え方はエスカレーションの判断で詳しく扱っています。要求の優先順位を決める場面では、MoSCoW分析のような手法で選択肢を整理しておくと、委員会の判断が早くなります。
運営委員会の会議はどう進める?
運営委員会がよく陥る失敗は、報告を聞くだけの会議になることです。判断の場にするための進め方の例を示します。
| 順番 | 議題 | PMが準備するもの |
|---|---|---|
| 1 | 前回の決定事項と宿題の確認 | 決定の記録と、その後の対応状況 |
| 2 | 全体の状況(予定・予算・リスク) | 1枚の要約。主要なマイルストーン、予算の消化、主なリスク |
| 3 | 判断が必要な事項 | 影響の分析、選択肢、PMとしての推奨案 |
| 4 | 決定と、担当・期限の確認 | 決定の記録(議事録)の案 |
判断が必要な事項は、会議の前に資料を送っておきます。そうすれば、会議の時間を説明ではなく判断に使えます。決まったことは記録し、計画と関係する文書を更新して、関係者に伝えます。
マイルストーンへの影響は、ガントチャートに予定と見込みを並べて示すと、短い会議でも伝わります。
PMP試験ではどう問われる?
PMP試験では、運営委員会という言葉が出ても出なくても、「判断する権限を持つのは誰か」が問われます。
- しきい値を超える変更が必要 → 定められた経路で、判断する権限を持つ会議体に上げる
- しきい値の内側の問題 → PMとチームで解決する(いちいち上げない)
- 委員会に報告する → 状況・影響・選択肢・推奨案をそろえる
- 委員会の決定が出た → 計画と関係文書を更新し、関係者に伝える
確認問題1
しきい値を超える予算の超過
(当サイトの独自問題)大規模な基幹システムの更新プロジェクトで、主要な部品の価格が上がり、予算を15%超える見込みになった。ガバナンスの計画では、予算の10%を超える変更は運営委員会が承認すると決まっている。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:1。超過は決められたしきい値を超えているので、PMが単独で決めることはできません。影響を分析し、選択肢と推奨案をそろえて、定められた経路で運営委員会の判断を求めます。
2:承認するのは運営委員会と決まっており、スポンサー1人の承認では決められた経路を飛ばします。3:スコープの削減も、PMの権限を超える判断です。4:交渉は続けてよいものの、報告を控えると判断が遅れます。しきい値を超える見込みが分かった時点で上げます。
確認問題2
委員会への報告の準備
(当サイトの独自問題)来週の運営委員会で、主要なマイルストーンが3週間遅れる見込みを報告することになった。委員会のメンバーは各部門の役員で、会議の時間は30分しかない。プロジェクト・マネジャーが準備すべきものとして、最も適切なものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。委員会は判断する場です。判断に必要な影響・選択肢・推奨案を、短くまとめて持っていきます。
1:詳しすぎて、30分では判断できません。2:責任の追及は判断の助けにならず、協力を損ないます。4:選択肢を示さず、楽観的な前提だけを見せると、透明性を欠き、後でより大きな問題になります。
確認問題3
権限の内側の問題
(当サイトの独自問題)あるテスト作業が2日遅れているが、後続の作業には余裕があり、マイルストーンには影響しない。ガバナンスの計画では、マイルストーンに影響しない遅れはプロジェクト・マネジャーの判断で対応すると決まっている。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。しきい値の内側の問題は、PMの権限で対応します。原因を確かめて手を打ち、状況を記録して、定例の報告に含めます。
1:権限の内側の問題を上げると、上位の判断者の時間を使わせ、PMの役割も果たしていません。2:作業を止めると、遅れがかえって広がります。3:余裕があっても、原因を確かめずに記録もしないと、同じ遅れがくり返されるおそれがあります。
POINT
ガバナンスとエスカレーションの問題は、Business Environment の領域でよく出ます。無料模試30問で、本番と同じ形式で解いてみてください。