EVMとは?予算と実績の比較だけでは何が足りない?
EVM は Earned Value Management の略で、アーンドバリュー・マネジメントと読みます。スケジュールとコストの状況を、金額という1つの物差しで同時に測る方法です。
「予算の半分を使った」だけでは、順調かどうか分かりません。作業も半分終わっていれば順調です。作業が3割しか終わっていなければ、遅れていて、お金も使いすぎています。
予算と実績(使ったお金)だけを比べる管理では、この違いが見えません。EVM は「作業がどこまで進んだか」を金額に直し、3つの数字で比べます。
予算と実績だけを比べる
- 比べるもの予算(支出の計画)と使ったお金
- 作業の進み具合分からない
- 分かること支出のペースが計画より速いか遅いか
EVM
- 比べるもの予定(PV)・できた分(EV)・使ったお金(AC)
- 作業の進み具合できた分を金額(EV)に直して測る
- 分かること遅れと予算超過を別々に判断できる
当サイトの整理
POINT
日本語の訳は教材によって違います(アーンドバリュー、アーンド・バリュー、出来高など)。試験は英語の略語(PV・EV・AC)で覚えると迷いません。
PV(計画価値)とは?
PV(Planned Value:計画価値)は、ある時点までに終わらせる予定だった作業の予算額です。承認済みの計画(ベースライン)から読み取ります。
例として、総予算1,000万円・期間10か月のシステム開発を考えます。4か月目の終わりまでに予定した作業の予算を積み上げると、400万円でした。この時点の PV は400万円です。
PV は最後に BAC(Budget at Completion:完成時総予算)と等しくなります。BAC はコスト・ベースラインの合計です。PV は計画の値なので、承認された変更でベースラインを改訂しない限り動きません。
EV(出来高)とは?
EV(Earned Value:出来高)は、完了した作業に、計画上いくらの予算を割り当てていたかです。EVM の中心となる値です。
同じ例で、4か月目の終わりに完了した作業を数えると、全体の35%でした。EV は BAC × 完了率なので、1,000万円 × 35% = 350万円です。
EV = BAC × 実際の完了率
- 1BAC(完成時総予算)= 1,000万円
- 24か月目の終わりの実際の完了率 = 35%
- 3EV = 1,000万円 × 0.35 = 350万円
EV = 350万円(予定の PV 400万円より50万円分、作業が少ない)
当サイトの架空の例
よくある間違いは2つあります。1つは、使ったお金(AC)をそのまま EV にする誤りです。もう1つは、経過期間の割合(4か月 ÷ 10か月 = 40%)を完了率にする誤りです。どちらも、作業の実際の完了度を測っていません。
完了した作業パッケージの予算を足し上げても EV になります。途中まで進んだ作業の数え方は、次の節で説明します。
AC(実コスト)とは?
AC(Actual Cost:実コスト)は、ある時点までに実際に使ったお金です。人件費・外注費・購入費など、その期間の作業にかかった実費を集計します。
例では、4か月目の終わりまでに使ったお金が420万円でした。AC = 420万円です。
AC は EV と同じ範囲で集計します。EV に入れていない作業の費用を AC に入れると、比べる意味がなくなるからです。
| 値 | 問い | 例(4か月目) | どこから取るか |
|---|---|---|---|
| PV(計画価値) | いくら分の作業を終える予定だったか | 400万円 | ベースライン(計画) |
| EV(出来高) | いくら分の作業が実際に終わったか | 350万円 | BAC × 実際の完了率 |
| AC(実コスト) | 実際にいくら使ったか | 420万円 | 実績の集計 |
| BAC(完成時総予算) | 全体の予算はいくらか | 1,000万円 | コスト・ベースラインの合計 |
途中まで進んだ作業のEVはどう数える?
EV を出すには、途中まで進んだ作業を何%と数えるかを決める必要があります。担当者の感覚で「8割くらい」と申告すると、数字は実態より大きくなりがちです。
そこで計画の段階で、作業ごとに測り方を決めておきます。よく使われる方法は次の4つです。
| 方法 | 数え方 | 向いている作業 |
|---|---|---|
| 0/100 | 終わった時点で予算の100%を計上する。途中は0% | 1回の報告期間の中で始まって終わる短い作業 |
| 50/50 など(固定比率) | 始めた時点で50%、終わった時点で残りの50%を計上する | 2回の報告期間の中で始まって終わる作業 |
| 重み付けマイルストーン | 作業を節目で区切り、節目を達成するごとに決めた割合を計上する | 期間が長く、途中に目に見える成果がある作業 |
| 完了率の見積り | 完了した割合を見積もって計上する | ほかの方法が使いにくい作業。完成した画面の数など、数えられる根拠で見積もる |
たとえば予算100万円の作業を50/50で数えると、着手した月に50万円、完了した月に残りの50万円が EV に入ります。
方法は作業ごとに使い分けてかまいません。大切なのは、計画の時点で決めておき、毎回同じルールで数えることです。プロジェクト管理のように成果物のない作業は、時間の経過で計上する方法(LOE)もあります。ただし主観が入るので、使いすぎないようにします。
S字カーブの図で見るとどうなる?
PV を時間に沿って積み上げると、立ち上がりがゆるく、中盤で急になり、終盤でまたゆるくなる線になります。形がアルファベットのSに似ているので、S字カーブ と呼ばれる線です。EV と AC を同じグラフに重ねると、状況がひと目で分かります。
例のプロジェクトの累計値を表にしました。4か月目の時点で、EV の線は PV の線の下にあり、AC の線は EV の線の上にあります。
| 月 | PV(累計) | EV(累計) | AC(累計) |
|---|---|---|---|
| 1か月目 | 50 | 40 | 50 |
| 2か月目 | 150 | 120 | 150 |
| 3か月目 | 270 | 230 | 280 |
| 4か月目(現時点) | 400 | 350 | 420 |
| 5〜10か月目 | 540 → 1,000(計画) | 未確定 | 未確定 |
グラフ問題はどう読む?
4か月目の時点の3つの値を並べると、下の図のようになります。読み方は、図の下にまとめた2つだけです。
- PV(予定)400万円
- EV(できた分)350万円
- AC(使った分)420万円
EV<PV なので遅れ、AC>EV なので予算超過。読むときは必ず EV を基準にします。
当サイトの架空の例
- EV と PV を比べる → スケジュール:EV が PV より下なら遅れ、上なら前倒し。
- EV と AC を比べる → コスト:AC が EV より上なら予算超過、下なら予算内。
POINT
PV と AC を直接比べても、遅れも超過も判断できません。グラフ問題のひっかけになりやすい点です。
PV・EV・ACから何が計算できる?
3つの値がそろうと、差(引き算)と指数(割り算)が出せます。例の数字で計算すると、次のとおりです。
SV = EV − PV、CV = EV − AC、SPI = EV ÷ PV、CPI = EV ÷ AC
- 1SV = 350 − 400 = −50万円(マイナス=遅れ)
- 2CV = 350 − 420 = −70万円(マイナス=予算超過)
- 3SPI = 350 ÷ 400 = 0.875(1未満=遅れ)
- 4CPI = 350 ÷ 420 ≒ 0.83(1未満=予算超過)
遅れていて、予算も超過している状態
当サイトの架空の例
| 指標 | 式 | 例(4か月目) | 意味 |
|---|---|---|---|
| EAC(完成時総コスト見積り) | BAC ÷ CPI | 1,000 ÷ (350 ÷ 420) = 1,200万円 | このままだと総額1,200万円かかる |
| ETC(残作業コスト見積り) | EAC − AC | 1,200 − 420 = 780万円 | あと780万円かかる |
| VAC(完成時差異) | BAC − EAC | 1,000 − 1,200 = −200万円 | 予算が200万円足りなくなる |
| TCPI(残作業効率指数) | (BAC − EV) ÷ (BAC − AC) | 650 ÷ 580 ≒ 1.12 | 予算内に収めるには、残りを1.12の効率で進める必要がある |
差異と指数の計算は EVMの計算問題|SV・CV・SPI・CPI で、例題を使って練習できます。EAC の式は前提によって4つあり、使い分けは EACの計算式4パターン で解説しています。
PMP で出る計算全体の地図は PMPの計算問題の公式一覧 にまとめました。
EVMの弱点は?
EVM は便利ですが、数字だけでは見えないことがあります。数字が良くても悪くても、原因を確かめてから判断するのが基本です。主な弱点は次の4つです。
- SPI は終盤に1へ近づく:作業がすべて終わると、EV も PV も BAC になります。そのため、遅れて終わっても SPI は1.0になります(次の節の例)。
- どの作業が遅れているかは分からない:SPI は全体をならした値です。余裕のある作業が先に進んでいると、クリティカルパス上の遅れが隠れます。
- 品質は測らない:「完了」の基準があいまいだと、手直しが必要な作業まで EV に入り、実態より良く見えます。
- 準備とデータ集めに手間がかかる:WBS、作業ごとの予算、EV の測り方を決め、AC を同じ範囲で集める必要があります。
SPIが終盤に1へ戻るのはなぜ?
PV は計画の終了日に BAC に達し、EV は作業がすべて終わった時点で BAC に達します。つまり、終わってしまえば EV と PV は同じ値です。数字で確かめると、次のとおりです。
完了した時点では EV = BAC、PV = BAC → SPI = 1.0
- 1計画:10か月で完了、BAC 1,000万円
- 2実際:12か月目の終わりに完了した
- 312か月目の PV = 1,000万円(計画では10か月目で全額)
- 412か月目の EV = 1,000万円(作業はすべて完了)
- 5SPI = 1,000 ÷ 1,000 = 1.0、SV = 0
2か月遅れたのに、SPI は「計画どおり」を示す
当サイトの架空の例
終盤や、遅れが疑われるときは、SPI だけで判断しません。クリティカルパスやマイルストーンの日付でも遅れを確かめます。
アジャイルのプロジェクトでもEVMは使う?
使えます。ただし、計画の単位が違う点に注意が必要です。リリースまでに予定したストーリーポイントの合計を全体の量とし、完了したポイントの割合を完了率とみなす方法があります。
たとえばリリースの予算が600万円、予定が200ポイント、完了が80ポイントなら、完了率は40%で、EV は240万円です。完了として数えるのは、完了の定義(DoD)を満たしたストーリーだけです。
ただし、バックログは途中で増減するので、基準をそろえ直す必要があります。アジャイルの状況は、バーンアップチャートやベロシティで見ることが多く、EVM はその補助として使います。
PMP試験ではどう問われる?
ECO 2026年版の Process タスク6は「財務の計画と管理」です。支出の追跡の計画と、財務上の差異の監視が含まれます。タスク9「プロジェクト状況の評価」には、指標の作成と分析、進捗の評価があります。EVM はこの2つのタスクで使う代表的な道具です。
旧版(2021年版)では、予算は資源と一緒に Process タスク5「予算と資源の計画と管理」にまとめられていました。2026年版では財務が独立したタスクになり、財務報告や予備の管理も明記されました。
新しい試験には、グラフや図を読んで答える問題(Graphic-Based Questions)が加わりました。S字カーブを見せて状態を聞く形も考えられます。問われ方は、次の3つに分けて準備します。
- 値を拾う:問題文の数字から PV・EV・AC を取り出す。完了率から EV を計算させる形に注意。
- グラフを読む:線の上下の位置から、遅れと予算超過を判断する。
- 次の行動を選ぶ:数字が悪いときは、原因を分析し、関係者に報告し、必要なら是正処置や変更要求に進む。
EVM の結果は、スポンサーや運営委員会(ステアリング・コミッティ)への状況報告にそのまま使えます。報告の組み立て方は 進捗報告の書き方 を参照してください。
確認問題1
報告すべき出来高はいくらか
(当サイトの独自問題)総予算800万円の社内研修プロジェクトの月次報告を準備しています。報告日の時点で、計画上は480万円分の作業を終える予定でした。実際に完了した作業は全体の50%で、実際に使った費用は450万円です。プロジェクト・マネジャーが報告書に記載すべき出来高(EV)はどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:2。EV = BAC × 実際の完了率 = 800万円 × 0.5 = 400万円です。
1:480万円は、予定の作業の予算額(PV)です。3:450万円は、実際に使った費用(AC)にあたります。4:240万円は、PV に完了率を掛けた値(480 × 0.5)です。完了率は全体(BAC)に対する割合なので、BAC に掛けます。
確認問題2
完了率の申告に根拠がない
(当サイトの独自問題)予測型のプロジェクトで、チームリーダーから週次報告が届きました。「予算の60%を使ったので、作業も60%完了です」と書かれています。成果物のレビューは、まだ一部しか終わっていません。スポンサーへの報告は明日です。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。使ったお金の割合は AC の話で、作業の完了度(EV)とは別物です。計画時に決めた出来高の測り方で、完了した作業を数え直してから報告します。
1:確かめる順番が逆で、根拠のない数字をスポンサーに出すことになります。2:経過期間の割合も、作業の完了度を表しません。4:決まった報告を延ばすと、スポンサーが判断に使う情報が遅れます。今ある事実で測り直して報告します。
確認問題3
S字カーブから状態を読む
(当サイトの独自問題)運営委員会の資料に、PV・EV・AC の累計を重ねたグラフがあります。報告日の時点では、PV の線が最も上、次が EV、最も下が AC です。委員の1人が状況の説明を求めました。プロジェクト・マネジャーの説明として正しいものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。EV が PV より下なので、スケジュールは遅れています。AC が EV より下なので、できた分に対して使ったお金は少なく、コストは予算内です。
1:EV<PV なので、前倒しではありません。AC<EV なので、予算超過でもありません。2:AC<EV なので、予算超過ではありません。3:EV と PV の線が離れているので、計画どおりではありません。
次に何をすればいい?
まず PV・EV・AC の3つを、問題文から確実に拾えるようにします。ここが曖昧なまま公式を覚えると、計算問題で取り違えます。
グラフや数字から状況を読む問題は、本番の形式で慣れておくと迷いが減ります。無料模試30問は登録不要で、本番と同じ形式の問題を試せます。