新試験で計算問題はどのくらい出る?
結論から言うと、計算問題の数は公表されていません。
ECO 2026年版に書かれているのは、試験全体の形です。全180問(採点対象170問・採点されない事前テスト10問)で、試験時間は240分です。10分の休憩が2回あり、試験時間には含まれません。
領域の配分は People 33%・Process 41%・Business Environment 26%です。問題の約40%が予測型で、残りの約60%がアジャイルとハイブリッドです。
PMP の問題の多くは「次に何をすべきか」を問う状況問題です。計算はそれ自体が目的ではなく、判断の材料として出ると考えて準備するのが効率的です。試験の範囲の全体は 新ECO(2026年版)の26タスク一覧 にまとめています。
計算はどのタスクで問われる?
ECO 2026年版には、「計算」という独立した項目はありません。ただ、タスクの中身を読むと、数字が判断の材料になる場面が分かります。当サイトで対応をまとめました。
| ECO 2026 のタスク | 関わる計算 |
|---|---|
| Process 6:財務の計画と管理 | EVM(CV・CPI・EAC・TCPI)、コスト・ベースライン、予備費 |
| Process 8:スケジュールの計画と管理 | クリティカルパス、フロート、三点見積もり、スケジュール短縮 |
| Process 9:プロジェクトの状況を評価 | SPI・CPI などの指標、バーンダウン・バーンアップの読み取り |
| Process 3:価値ベースのデリバリーを確実に支援する | NPV・BCR・回収期間(投資に見合う価値か) |
| Process 5:調達の計画とマネジメント | インセンティブ契約の支払額 |
| Process 7:プロダクト/成果物の品質の計画と最適化 | 品質コスト、管理図の読み取り |
| Business Environment 5:リスクの計画とマネジメント | EMV、デシジョンツリー |
| People 8:コミュニケーションの計画と管理 | コミュニケーション・チャネル数 |
表は、出題の数を示すものではありません。どのタスクでも、計算そのものより「数字から何を判断するか」が問われると考えてください。
EVMの公式は?
EVM の式は、PV・EV・AC・BAC の4つの値から作られます。EV の意味は EVM(アーンドバリュー)とは? で図を使って解説しています。
| 名前 | 式 | 読み方 |
|---|---|---|
| EV(出来高) | BAC × 実際の完了率 | 完了した作業の予算額 |
| SV(スケジュール差異) | EV − PV | マイナスなら遅れ |
| CV(コスト差異) | EV − AC | マイナスなら予算超過 |
| SPI(スケジュール効率指数) | EV ÷ PV | 1未満なら遅れ |
| CPI(コスト効率指数) | EV ÷ AC | 1未満なら予算超過 |
| EAC ① | BAC ÷ CPI | 今のコスト効率が続く |
| EAC ② | AC + (BAC − EV) | 差異は一時的で、残りは計画どおり |
| EAC ③ | AC + (BAC − EV) ÷ (CPI × SPI) | コストとスケジュールの両方の効率が影響 |
| EAC ④ | AC + ボトムアップETC | 見積りの前提が崩れ、残りを見積り直す |
| ETC(残作業コスト見積り) | EAC − AC | 完成までにあといくら |
| VAC(完成時差異) | BAC − EAC | マイナスなら予算不足の見込み |
| TCPI(BAC 基準) | (BAC − EV) ÷ (BAC − AC) | 1より大きいほど厳しい |
| TCPI(EAC 基準) | (BAC − EV) ÷ (EAC − AC) | 承認された EAC に収める効率 |
覚え方のコツは3つです。1つめ、差(SV・CV)も指数(SPI・CPI)も、EV が先頭に来ます。2つめ、差はマイナス、指数は1未満が「悪い」です。3つめ、コスト(C)は AC と、スケジュール(S)は PV と比べます。
EVMを1つの例で通して計算すると?
EVM の問題は、1つの状況から差・指数・見込みを続けて出す形が多いです。同じ数字で通して計算してみます。
BAC 1,000・PV 500・EV 400・AC 500(万円)
- 1SV = 400 − 500 = −100、SPI = 400 ÷ 500 = 0.8
- 2CV = 400 − 500 = −100、CPI = 400 ÷ 500 = 0.8
- 3EAC ① = 1,000 ÷ 0.8 = 1,250
- 4ETC = 1,250 − 500 = 750、VAC = 1,000 − 1,250 = −250
- 5TCPI(BAC 基準)= (1,000 − 400) ÷ (1,000 − 500) = 1.2
遅れ・超過。今の効率なら250万円不足し、予算内に収めるには効率を0.8から1.2に上げる必要がある
当サイトの架空の例
差がマイナスで、指数が1未満なので、遅れと予算超過が同時に起きています。状況問題では、この数字を出した後に「原因を分析し、対策を関係者と決める」行動が問われます。
スケジュールの計算は?
| 名前 | 式 | ポイント |
|---|---|---|
| クリティカルパス | 所要期間の合計が最長の経路 | その長さがプロジェクトの最短期間 |
| フォワードパス | EF = ES + 期間(0始まり) | 合流点の ES は先行の EF の最大値 |
| バックワードパス | LS = LF − 期間(0始まり) | 分岐点の LF は後続の LS の最小値 |
| トータルフロート | LS − ES(= LF − EF) | 完了日を遅らせずに遅らせられる日数 |
| フリーフロート | 後続の ES の最小値 − 自分の EF | 後続を遅らせずに遅らせられる日数 |
| PDM のリード・ラグ | FS +ラグ:後続の ES = 先行の EF + ラグ(リードは引く) | SS・FF は先行の開始・終了を基準にする |
| 三角分布 | (O + M + P) ÷ 3 | 単純平均 |
| PERT(ベータ分布) | (O + 4M + P) ÷ 6 | 最可能値を4倍で重み付け |
| 標準偏差(PERT) | (P − O) ÷ 6 | 経路では分散を足して平方根 |
| 期間の幅 | 期待値 ± 標準偏差 × 1・2・3 | 正規分布で近似すると約68%・約95%・約99.7% |
| クラッシュ・コスト/日 | (クラッシュ時コスト − 通常コスト) ÷ (通常期間 − クラッシュ期間) | クリティカルパス上で安い順に縮める |
スケジュールの計算は、資源の制約と組み合わせて問われることもあります。人や設備の取り合いを調整する考え方は 資源平準化 で扱っています。
コスト・意思決定の計算は?
| 名前 | 式 | 判断 |
|---|---|---|
| EMV(期待金額価値) | 発生確率 × 影響額 | 脅威はマイナス、好機はプラス |
| デシジョンツリー | 案ごとに Σ(確率 × 結果の金額) | 費用なら小さい案、利益なら大きい案 |
| コスト・ベースライン | 作業の見積り合計 + コンティンジェンシー予備 | EVM の BAC になる |
| プロジェクト予算 | コスト・ベースライン + マネジメント予備 | マネジメント予備の使用には承認が必要 |
| 現在価値 | 将来の金額 ÷ (1 + 割引率)^年数 | 遠い将来ほど小さい |
| NPV(正味現在価値) | 収入の現在価値の合計 − 初期投資 | 大きい方。年数で割らない |
| IRR(内部収益率) | NPV が0になる割引率 | 大きい方。求める収益率と比べる |
| BCR(便益費用比) | 便益 ÷ 費用 | 1より大きければ価値あり。大きい方 |
| ROI(投資利益率) | (便益 − 費用) ÷ 費用 | 大きい方。BCR から1を引いた値と同じ |
| 回収期間 | 初期投資 ÷ 1年あたりの収入(均等の場合) | 短い方 |
| コミュニケーション・チャネル数 | n(n − 1) ÷ 2 | プロジェクト・マネジャーも n に含める |
選定の指標が複数並んだら、NPV や IRR のように時間価値を含む指標を優先して判断するのが基本です。回収期間だけ、BCR だけが示されているときは、その指標で比べます。
品質・調達の計算は?
品質と調達にも、式で解く問題があります。式は単純ですが、比率の向きや線の意味を取り違えやすい分野です。
アジャイルの計算は?
アジャイルの計算は、ほとんどが割り算と平均です。
| 名前 | 式 | 例 |
|---|---|---|
| ベロシティ(平均) | 直近のイテレーションの完了ポイントの平均 | (24 + 28 + 26) ÷ 3 = 26 |
| 必要なイテレーション数 | 残りのポイント ÷ ベロシティ(切り上げ) | 130 ÷ 26 = 5 |
| リリースまでの期間 | イテレーション数 × 1イテレーションの期間 | 5 × 2週間 = 10週間 |
| チームの稼働できる時間 | 人数 × 日数 × 1日の作業時間 × 稼働率 | 5人 × 10日 × 6時間 × 0.8 = 240時間 |
バーンダウンチャートやバーンアップチャートでは、計算よりも「線の傾きから、いつ終わりそうか」を読む問題が中心です。残りの量を示す線の下がり方が予定の線よりゆるければ、予定より遅れています。
電卓は使える?計算の環境は?
PMI 認定ハンドブック(2026年6月改訂版)によると、テストセンターで受けるコンピューター試験には電卓が組み込まれています。試験中に手を挙げれば、卓上の電卓を頼むこともできます。
メモには、冊子のメモ用紙と鉛筆2本、または消せるマーカーボード2枚が渡されます。どちらになるかはテストセンターの備品しだいで、受験者は選べません。紙で受ける試験でも、電卓は配られます。
オンライン受験の決まりは、試験の実施会社(Pearson VUE など)の案内に従います。受験の前に確かめてください。
電卓があっても、時間のかけすぎには注意が必要です。240分で180問なので、1問あたりの平均は約80秒です。試験対策の数字は 0.8・1.25 のように暗算しやすいものが多く、式を選ぶ速さが点数を左右します。
- 1
値を書き出す
PV・EV・AC、期間、確率など、問題文の数字に名前を付ける
- 2
前提を読む
「今の傾向が続く」「一度きり」「ベータ分布」など、式を決める言葉を探す
- 3
式に入れる
分子と分母、符号を確かめて計算する
- 4
検算する
掛け算で戻す(PV × SPI = EV など)
- 5
判断につなげる
数字の意味を読み、「次に何をするか」を選ぶ
当サイトの整理
計算を含めた勉強の進め方は PMP の勉強法 で解説しています。
よくある誤りは?
計算問題の失点は、式を知らないことより、向きや前提の取り違えから起きます。解いた後に次の7点を見直すだけで、ミスはかなり減らせます。
- 差の符号を逆にする:SV = PV − EV としてしまう。EVM の差は、どれも EV から引く。
- 割る向きを逆にする:CPI・SPI・BCR は、EV や便益を分子に置く。大きいほど良い形になる。
- EAC の前提を読み違える:「今の傾向が続く」なら BAC ÷ CPI、「一度きりの差異」なら AC + (BAC − EV)。
- TCPI の基準を取り違える:当初の予算なら BAC、承認された新しい見込みなら EAC を使う。
- チャネル数で自分を数え忘れる:プロジェクト・マネジャーも n に入れる。
- NPV を年数で割る:NPV は、現在価値の合計から初期投資を引くだけ。
- クリティカルパス以外を縮める:完了日は早まらず、費用だけが増える。
確認問題1
今の傾向が続く場合の完成時見込み
(当サイトの独自問題)BAC 400万円のプロジェクトで、PV は180万円、EV は160万円、AC は200万円です。原因を分析した結果、今のコスト効率は今後も続くと判断しました。スポンサーへの報告に記載する EAC はどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。CPI = 160 ÷ 200 = 0.8。今の効率が続くので、EAC = BAC ÷ CPI = 400 ÷ 0.8 = 500万円です。
1:AC + (BAC − EV) = 440万円で、残りが計画どおりの効率で進む前提の式です。2:BAC のままで、差異を反映していません。4:CPI × SPI を使う式の値です(SPI = 160 ÷ 180 ≒ 0.89、200 + 240 ÷ (0.8 × 160/180) = 537.5)。スケジュールの効率も影響する前提の式です。
確認問題2
スポンサーの質問に合う指標
(当サイトの独自問題)運営委員会(ステアリング・コミッティ)で、スポンサーから質問がありました。「当初の予算内で完成させるには、残りの作業をどれだけ効率よく進める必要があるのか」。新しい EAC は、まだ承認されていません。プロジェクト・マネジャーが示すべき指標はどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:2。当初の予算(BAC)に収めるために、残りの作業に必要な効率を示すのは、BAC 基準の TCPI = (BAC − EV) ÷ (BAC − AC) です。
1:承認された新しい EAC に収めるための効率で、EAC はまだ承認前です。3:これまでの効率で、これから必要な効率とは違います。4:完成時の予算の過不足の見込みで、効率ではありません。
確認問題3
残りのイテレーション数
(当サイトの独自問題)アジャイルのチームの直近3回のベロシティは、24・28・26ポイントです。リリースまでに残っているバックログは130ポイントで、内容の変更は予定されていません。プロダクトオーナーに、あと何回のイテレーションが必要かの見通しを伝えます。正しいものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。平均ベロシティは (24 + 28 + 26) ÷ 3 = 26ポイント。130 ÷ 26 = 5回です。
1:最も低いベロシティ24で割り、切り上げた値です(130 ÷ 24 ≒ 5.4 → 6)。悲観側の見通しには使えますが、平均による見通しではありません。2:最も高いベロシティ28で割り、端数を切り捨てた値です(130 ÷ 28 ≒ 4.6)。3:3回分の合計78で割った値(130 ÷ 78 ≒ 1.7 → 2)で、1回あたりの量になっていません。
次に何をすればいい?
公式の表を見ながら1問ずつ解き、慣れたら表を見ずに解けるかを確かめます。間違えた式だけを書き出しておき、試験の直前に見直すと効率的です。
本番と同じ形式で、計算と状況判断が混ざった問題を解きたい人は、無料模試30問から始めてください。