コンフリクトマネジメントとは?
コンフリクトマネジメントとは、チームや関係者の間の対立(コンフリクト)を見つけ、原因を確かめ、建設的な解決に導くことです。目的は対立をなくすことではありません。意見の違いを、より良い結論につなげることです。
対立を放置すると、決定の遅れ、手戻り、人間関係の悪化を招きます。小さいうちに表に出して扱うのが基本です。
PMP 試験では、試験内容の概要(ECO 2026)の People タスク2「対立をマネジメントする(Manage conflicts)」にあたります。イネーブラー(仕事の例)は次の6つです(当サイトによる要約)。
- 対立の原因を特定する。
- 対立の状況(背景)を分析する。
- 合意した解決策を実行する。
- 対立への向き合い方の原則を、チームと外部の関係者に伝える。
- 共通のグランドルールを守る環境を作る。
- グランドルール違反を扱い、正す。
旧版(2021年版)では「対立のマネジメント」と「グランドルールの設定」が別のタスクでした。新版ではひとつにまとまっています。
試験が見ているのは、対処法の名前の暗記ではありません。プロジェクト・マネジャー(PM)が原因を確かめ、当事者が合意できる解決に導けるかです。
プロジェクトで対立が起きる主な原因は?
プロジェクトの対立は、性格の不一致より、仕事の進め方から生まれることが多いです。代表的なものは次のとおりです。
- スケジュール: 作業の順番や締め切りをめぐる食い違い。
- 優先順位: どの要求や作業を先にするかの考えの違い。
- 資源: 人や設備の取り合い。兼務のメンバーをめぐる部門間の対立。
- 技術的な意見: 設計や手法の選び方の違い。
- 役割と責任のあいまいさ: 誰が決めるのか、誰がやるのかが決まっていない。
- コスト: 予算の配分や見積もりの差。
- 人間関係・コミュニケーション: 情報が伝わらない、言い方が強い、など。
大きく分けると、利害(資源・予算・優先順位)、考え方(技術・進め方)、感情(言い方・不信感)の3つです。感情の対立は、利害や考え方の対立が長引いて生まれることもあります。表に見える感情だけでなく、根の原因まで確かめます。感情への気づきと扱い方は感情的知性(EI)の記事で解説しています。
原因によって、効く対処法は変わります。役割のあいまいさが原因なら、当事者を説得するより責任分担を決め直す方が根本的です。原因を見誤ると、話し合っても対立はぶり返します。
5つの対処法とは?協力・妥協・強制はどう違う?
PMP の学習では、対立への対処法を次の5つの呼び名で覚えるのが一般的です。
| 対処法 | やること | 結果 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 協力/問題解決 | 複数の視点を出し合い、根本の問題を一緒に解く | 全員が納得する(Win-Win) | 時間があり、関係が大事で、長く続く解決が要るとき |
| 妥協/和解 | 互いに一部をゆずり合う | どちらも一部だけ満たされる | 力が拮抗し、ほどほどの解決で早く進めたいとき |
| 鎮静/適応 | 相違点より共通点を強調し、場を和らげる | 一時的に収まる | 関係を保ちたいとき、争点が小さいとき |
| 強制/指示 | 権限で一方の案に決める | 一方だけが満たされる(Win-Lose) | 緊急時、安全や法令に関わるとき |
| 撤退/回避 | その場では扱わず、先送りする | 解決しない | 感情が高ぶって冷却が要るとき、自分の範囲外のとき |
「常に最善」の対処法はありません。協力が理想でも、時間がまったくない場面や、法令違反が絡む場面では使えません。逆に、強制は関係を傷つけやすい手です。ふだんの意見の違いに使うと、不満が残ります。
協調・競争・服従…呼び名が違うのはなぜ?対応表
対処法は、自分の主張をどれだけ通すか(主張性)と、相手の要望にどれだけ応えるか(協力性)の2軸で整理されます。トーマスとキルマンが示した5つのモードが元になっていて、訳語が教材ごとに違います。
ビジネス書では「協調・競争・服従」、PMP の教材では「協力・強制・鎮静」のように呼び名が分かれます。英語の名前で対応をつかんでおくと、どの教材でも迷いません。
| この記事の呼び名 | 英語(PMP の教材) | 英語(トーマスとキルマン) | ほかの訳語 | 主張性/協力性 |
|---|---|---|---|---|
| 協力/問題解決 | Collaborate / Problem solve | Collaborating | 協調、協働 | 高い/高い |
| 妥協/和解 | Compromise / Reconcile | Compromising | 妥協 | 中くらい/中くらい |
| 鎮静/適応 | Smooth / Accommodate | Accommodating | 順応、服従、受容 | 低い/高い |
| 強制/指示 | Force / Direct | Competing | 競争、競合 | 高い/低い |
| 撤退/回避 | Withdraw / Avoid | Avoiding | 回避 | 低い/低い |
試験の選択肢は、名前ではなく行動で書かれます。「双方の案の中間をとる」なら妥協、「権限で決める」なら強制、「その場では扱わない」なら撤退、と行動から読み取りましょう。
状況別にどの対処法を選ぶ?
対処法は、緊急度・関係の大切さ・争点の重さで選びます。次の図は、試験で迷ったときの目安です。
- 1
安全・法令に関わるか
関わるなら、まず止める・決める(強制)。話し合いは後
- 2
感情が高ぶっているか
高ぶっているなら、いったん時間を置く(一時的な撤退)。放置はしない
- 3
原因を確かめたか
まだなら、当事者から個別に話を聞き、事実を集める
- 4
一緒に解く時間があるか
あるなら、当事者で根本の問題を解く(協力)
- 5
時間がなく力が拮抗
ゆずり合って決める(妥協)。後で見直す
基本は協力。制約があるときだけ、他の対処法を一時的に使う。
一時的な撤退と「放置」は違います。会議が感情的になったとき、休憩を入れて翌日に話し合うのは正当な手です。しかし対立をずっと扱わないと、問題は大きくなります。試験で「様子を見る」「当事者に任せて何もしない」が正解になることは、まれです。
PMP で正解になりやすい対処法はどれ?
当サイトでは、対立の状況問題を次の順で見ることをすすめています。
- 当事者どうしで解決を試みる機会があるかを見る。チームが自分たちで解けるなら、PM はその場を支える。
- PM が入るときは、個別に話を聞いて原因と状況を確かめる。
- 当事者を集めて、根本の問題を一緒に解く(協力)。
- チームや PM の権限で解けないとき、方針の判断が要るときに、スポンサーや機能部門のマネジャーに上げる。
よく出る誤りの選択肢は4つです。すぐにスポンサーへエスカレーションする。PM が一方的に決める。当事者の一人をチームから外す。問題を無視して作業を続けさせる。いずれも、最初の一手としてはほぼ正解になりません。
アジャイルでは、チームが自己組織的に対立を解くことが重視されます。PM やスクラムマスターは話し合いの場を整え、グランドルールに沿って進むよう支えます。リーダーとしての振る舞い全般はPMPのリーダーシップスタイルで扱っています。
対立を予防する仕組みは?
ECO は「対立への向き合い方の原則を伝える」ことも挙げています。起きてから処理するだけでなく、起きる前から扱い方を決めておくためです。予防には次の仕組みが効きます。
- グランドルール: 意見の違いの扱い方を、チーム全員で決めておく(例:反対意見は会議中に出す、人ではなく案を批判する)。
- 役割と責任の明確化: 誰が決めるかを先に決めておくと、決定権をめぐる対立が減る。
- 共通のビジョン: 判断の物差しがそろうと、優先順位の争いを話し合いで解きやすい。詳しくはビジョン共有の記事へ。
- 早めに表に出す文化: 小さな不満のうちに言える場(ふりかえりや1対1の面談)を作る。
対立そのものは悪ではありません。異なる意見がぶつかることで、より良い案が生まれることもあります。PM の役割は、対立を建設的な話し合いに変えることです。
対立の問題は People 領域でよく出ます。タスク別ドリルでまとめて解くと、判断が速くなります。
確認問題1
2人の技術者が設計で対立している
(当サイトの独自問題)予測型のプロジェクトで、2人のシニア技術者がデータベースの設計方針で対立しています。会議のたびに議論が平行線になり、設計の承認が1週間遅れています。締め切りまでには、まだ3週間の余裕があります。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。時間に余裕があり、2人とも今後の作業に欠かせません。協力(問題解決)が最も適します。まず個別に論点を確かめ、そのうえで根本の問題を一緒に解きます。
1:PM が一方に決める強制で、もう一人の納得が得られません。経験の長さも判断の根拠になりません。2:妥協は時間がないときの手で、技術的に最適とは限りません。4:設計はチームで判断できる範囲です。スポンサーに上げるのは早すぎます。
確認問題2
安全に関わる作業手順で意見が割れた
(当サイトの独自問題)工場の設備更新プロジェクトで、作業班のリーダーが「手順を省けば1日早く終わる」と主張し、安全担当者と言い争いになっています。省こうとしている手順は社内の安全規程で必須とされ、例外は認められていません。作業は今日の午後に始まる予定です。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:1。必須の安全規程に関わり、作業が目前に迫っています。PM が規程に沿って決める(強制)のが適切です。決めたうえで理由を説明し、関係の悪化を抑えます。
2:規程で必須の手順は、話し合いでゆずれるものではありません。時間もありません。3:分析と記録をしても、今日の作業の手順は決まりません。4:規程で答えが決まっており、PM がその場で判断できます。
確認問題3
同じ対立がくり返し起きている
(当サイトの独自問題)アジャイルチームで、テスト担当と開発者の間に「どの時点で作業を完了とみなすか」をめぐる言い争いが、スプリントのたびに起きています。プロジェクト・マネジャーはそのつど間に入り、その場は収まってきました。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
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正解:2。同じ対立がくり返されるのは、完了の基準があいまいだからです。チームで完了の定義(DoD)を見直して合意し、明文化すれば、原因そのものを取り除けます。
1:そのつど解いても、原因が残るので再発します。3:態度ではなく基準のあいまいさが原因なので、的外れです。4:担当を分けるのは対立の回避で、協働が要るチームでは逆効果です。