感情的知性(EI)とは?EQ と同じもの?
感情的知性(Emotional Intelligence、EI)は、自分と他人の感情を見分け、理解し、考えや行動に生かす力のことです。心理学者のサロベイとメイヤーが1990年の論文でこの概念を示しました。その後、ダニエル・ゴールマンの一般向けの本で広く知られるようになりました。
日本では「EQ(Emotional Quotient、心の知能指数)」と呼ばれることも多く、日常的にはほぼ同じ意味で使われます。厳密には、EQ は数値で表した指標を指す言葉です。ただ、PMP の学習では区別しなくても困りません。
プロジェクト・マネジャー(PM)の仕事は、多くが人との関わりです。技術や手法に詳しくても、相手の不安や不満に気づけなければ、対立が深まったり、協力が得られなかったりします。感情的知性は、人に関わる仕事の土台になる力です。
感情的知性の4つの要素とは?
感情的知性の分け方にはいくつかのモデルがあります。PMP の学習では、ゴールマンらが広めた次の4つに整理するのが一般的です。自分に向かう2つと、他人に向かう2つに分かれます。
自分について
- 気づく自己認識:自分の感情とその影響に気づく
- 動く自己管理:感情に流されず、行動を選ぶ
他人について
- 気づく社会的認識:相手の感情や立場を察する
- 動く関係管理:信頼を築き、人を動かし、対立を扱う
まず自分に気づき、自分を整えてから、相手に向き合う。
教材によっては、自分を動かす力(動機づけ)を加えた5つで説明するものもあります。なお、サロベイとメイヤーの側は、感情を知覚する・使う・理解する・調整する、という4つの能力で整理しています。どの分け方でも、「気づいてから動く」という順番は同じです。
自己認識・自己管理は PM の行動でいうと?
自己認識 は、自分が今どんな感情を抱いていて、それが判断や態度にどう影響しているかに気づく力です。たとえば「スポンサーに厳しく言われて焦っている。だからチームへの言い方がきつくなっている」と気づければ、行動を直せます。
自己管理 は、感情に気づいたうえで、その場にふさわしい行動を選ぶ力です。怒りを感じても、すぐにメールで言い返さず、落ち着いてから返事をする、といった行動がこれに当たります。
試験の問題文に、PM 自身が感情的になりそうな場面(理不尽な要求、強い非難など)が出ることがあります。そのときは「PM がまず自分を落ち着かせ、事実を確かめる」選択肢を探すとよいでしょう。
社会的認識・関係管理は PM の行動でいうと?
社会的認識 は、相手の感情や立場、言葉にされていない懸念を察する力です。中心にあるのは共感(エンパシー)です。会議で黙り込んだメンバーの様子に気づく、ステークホルダーの反対の裏にある不安を読みとる、といった行動に当たります。
関係管理 は、察した感情をふまえて、信頼関係を築き、協力を引き出し、対立を扱う力です。相手に合わせた伝え方を選ぶ、対立する2人の話を聞いて合意に導く、チームの意欲を高める、といった行動です。
関係管理は、対立の対処やステークホルダーへの働きかけと深くつながっています。チームの意欲の高め方は、動機づけ理論の記事で解説しています。
チームの対立や不満にどう使う?
感情的知性は、問題がこじれたときほど役立ちます。たとえば、メンバーが会議で強い口調で不満をぶつけてきた場面を考えます。
| 段階 | 使う要素 | PM の行動の例 |
|---|---|---|
| 1. 自分の反応に気づく | 自己認識 | 「責められたと感じて、言い返したくなっている」と気づく |
| 2. 反応を整える | 自己管理 | その場で言い返さず、話を最後まで聞く姿勢をとる |
| 3. 相手の感情を察する | 社会的認識 | 不満の裏に、負担の偏りや評価への不安がないかを考える |
| 4. 関係を立て直す | 関係管理 | 個別に話す場を設け、事実を確かめて一緒に対策を考える |
感情が高ぶっている最中に問題を解決しようとしても、うまくいきません。まず相手の感情を受け止め、落ち着いてから事実と解決策の話に進むのが基本です。
対立そのものの扱い方はコンフリクトマネジメントの記事、意見を言っても責められない雰囲気づくりは心理的安全性の記事で扱っています。
感情的知性は高められる?PM が日々できる練習
感情的知性は、日々の行動の習慣として練習できます。4つの要素ごとに、PM がすぐ始められることを挙げます。
- 自己認識: 強い感情が出たら、「焦り」「不安」などと名前をつける。1日の終わりに、感情が判断に影響した場面を振り返る。
- 自己管理: 感情が高ぶったときは、返信や決定の前に時間を置く。事実を確かめてから動く。
- 社会的認識: 会議では、発言の量や表情の変化にも注意を向ける。気になる人には、1対1で話を聞く。
- 関係管理: 相手に合わせて伝え方を変える。成果や協力には、具体的に感謝を伝える。
自分の感情の出方は、自分では気づきにくいものです。信頼できる同僚に、会議での振る舞いについて率直な意見をもらうのも役立ちます。
PMP 試験ではどう問われる?
旧版の試験内容の概要(2021年版)では、People 領域に「感情的知性を活用してチームのパフォーマンスを高める」というタスクがありました。2026年7月9日からの新版(ECO 2026)には、感情的知性を名前に含むタスクはありません。
ただし新版の People 領域にも、感情的知性が欠かせないタスクが並んでいます。対立のマネジメント(タスク2)、チームを率いる(タスク3)、ステークホルダーとの信頼づくり(タスク4)などです。言葉として問われるより、状況問題の判断の中で使う力と考えるのがよいでしょう。
当サイトでは、次のような選択肢が正解になりやすいと見ています。
- 怒っている相手に、まず話を聞き、感情を受け止める。
- 人前で感情的になっているメンバーとは、場所を変えて個別に話す。
- PM 自身が感情的になりそうなときは、すぐに反応せず事実を確かめる。
- 相手の性格や状況に合わせて、伝え方を変える。
リーダーとしての振る舞い全体は、PMPのリーダーシップスタイルにまとめています。感情が絡む状況問題は、無料模試30問でも試せます。
確認問題1
スポンサーから厳しいメールが届いた
(当サイトの独自問題)金曜日の夕方、スポンサーから厳しいメールが届きました。「進捗報告の数字が先週と合わない。チームの管理ができていないのではないか」という内容です。PM は数字の違いに心当たりがなく、強い不快感を覚えています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。まず自分の感情に気づいて整え(自己認識・自己管理)、事実を確かめてから回答します。感情のまま返信すると、関係が悪化しやすくなります。
1:事実を確かめずに反論すると、数字に誤りがあった場合に信頼を失います。2:誤りかどうかも分からないうちに、メンバーを責めています。4:事実の確認より先に上位に持ち込むと、関係がこじれます。
確認問題2
いつも明るいメンバーが急に口数が減った
(当サイトの独自問題)チームでいつも積極的に発言していたメンバーが、この2週間ほど、会議でほとんど話さなくなりました。作業の成果物には、今のところ問題はありません。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:2。様子の変化に気づくのは社会的認識、その後の関わり方は関係管理です。人前ではなく1対1で、気にかけていることを伝えて話を聞きます。
1:変化に気づいているのに何もしないと、問題が大きくなるおそれがあります。3:理由が分からないまま人前で発言を求めると、負担になることがあります。4:本人と話す前に上司に問い合わせると、信頼を損ねます。
確認問題3
顧客の担当者が会議で声を荒げた
(当サイトの独自問題)仕様の確認会議で、顧客側の担当者が「前回お願いした点が全然反映されていない」と声を荒げ、場の空気が悪くなりました。チームのメンバーは反論したそうにしています。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:4。感情が高ぶっている相手には、まず話を聞いて受け止めることが先です。そのうえで、どの点が反映されていないと感じているのかを、具体的に確かめます。
1:受け止める前に説明すると、反論と受け取られて対立が深まります。2:懸念を聞かずに中断すると、不満が残ります。3:チームを黙らせても、顧客の懸念への対応にはなっていません。