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PMPの交渉とは?新ECOの交渉戦略・BATNA・合意の作り方

PMP新ECO(2026年版)で調達のタスクに入った「交渉戦略」と「契約の交渉への参加」を解説。準備の5項目、BATNAと合意できる範囲、利害で話す進め方、合意を契約に反映する手順。確認問題3問つき。

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執筆
プロマネ模試 編集部
まず結論

この記事の要点

  • 新ECOでは、Process タスク5(調達)のイネーブラーに「交渉戦略を決める」「契約の交渉に参加する」が挙がっています。旧版では People 領域のタスクでした。
  • 準備の中心は、BATNA(合意できなかったときの最善の代案)と、譲れる限界の確認です。
  • 立場(要求)ではなく利害(なぜそれが必要か)で話すと、双方が得をする合意を見つけやすくなります。
  • 合意した内容は書面にし、権限のある人の承認を経て、契約と計画に反映します。

新ECOで交渉はどこで問われる?

2026年版の ECO では、Process タスク5「調達を計画し管理する」のイネーブラーに、交渉の項目が2つ並んでいます。「交渉戦略を決める」と「契約の交渉に参加する」です。

旧版(2021年版)では、交渉は People 領域のタスク8「プロジェクトの合意を交渉する」でした。2026年版では調達のタスクに入り、ベンダーとの契約の交渉として問われやすくなったと考えられます。調達の流れ全体は調達マネジメントとは?を参照してください。

交渉は調達だけのものではありません。資源の取り合い、スコープの調整、関係者どうしの対立など、People 領域の場面でも同じ考え方を使います。この記事では、契約交渉を中心に、プロジェクトで使える交渉の基本を整理します。

注意したいのは「参加する」という表現です。契約に署名する権限は、多くの組織で調達部門や法務にあります。プロジェクト・マネジャー(PM)は、技術・範囲・スケジュールをいちばんよく知る立場で交渉に加わります。そして、プロジェクトの目的に合う条件になるよう支えます。

交渉の前に何を準備する?BATNAとは?

交渉の結果は、準備でほぼ決まります。当サイトでは、次の5つを準備することをすすめます。

合意できる範囲の考え方(架空の価格交渉)

買い手(自社)

  • 希望900万円で頼みたい
  • 譲れる限界1,100万円まで(他社の見積もりが1,100万円)
  • BATNA他社に1,100万円で頼む

売り手(ベンダー)

  • 希望1,200万円で受けたい
  • 譲れる限界1,000万円まで(これ未満は赤字)
  • BATNA他の案件に人を回す

1,000万〜1,100万円の間なら双方が合意できる。範囲が重ならなければ、価格以外の条件を探る

架空の例

  1. 目的:この交渉で何を得たいか。プロジェクトの目的と成功基準に照らして決める。
  2. 優先順位:価格・納期・品質・支払い条件・保守など、何を最も重視し、何なら譲れるか。
  3. BATNA:合意できなかったときの最善の代案。例:別の会社に頼む、内製に切り替える。
  4. 譲れる限界(留保点):これを超えるなら合意しない、という線。BATNA と比べて決める。
  5. 相手の利害:相手は何を重視しているか。売上、継続的な取引、実績づくり、支払いの早さなど。

BATNA(Best Alternative To a Negotiated Agreement)は、交渉の力の源です。良い代案があれば、不利な条件をのむ必要はありません。逆に代案が弱いと分かっていれば、交渉の前に代案を強くすることを考えます。他社からも見積もりを取る、などです。

Win-Winを目指すにはどう進める?

PMP で正解になりやすいのは、相手を打ち負かす交渉ではなく、双方が得をする合意(Win-Win)を目指す交渉です。プロジェクトでは、交渉の相手と契約後も一緒に仕事を続けるからです。進め方のポイントは次のとおりです。

  • 立場ではなく利害で話す:「価格を1割下げてほしい」(立場)ではなく、「今期の予算の枠に収めたい」(利害)を伝える。利害が分かれば、支払いの時期をずらす、範囲を段階に分けるなど、別の解決策が見えてくる。
  • 選択肢を増やしてから決める:価格だけの1本の線で押し合うと、どちらかが損をする。納期・範囲・支払い条件・保守など、複数の条件を組み合わせて交換する。
  • 客観的な基準を使う:市場の相場、過去の実績、業界の標準など、双方が納得できる物差しで話す。
  • 人と問題を切り離す:相手を責めず、問題に向き合う。感情的になった場面では、いったん休憩を取る。
  • 誠実に話す:PMI の倫理規定が重んじる誠実さと公正さに反するような、うそや不当な圧力は使わない。

交渉で行き詰まったら、事前に決めた BATNA と留保点に立ち返ります。限界を超える条件をのむくらいなら、代案に切り替えるほうがプロジェクトのためになります。

合意内容はどう契約に反映する?

交渉の場で合意しても、契約や計画に正しく反映されなければ意味がありません。反映の手順を整理します。

交渉から契約・計画への反映
  1. 1

    合意事項の確認

    その場で要点を読み合わせる

  2. 2

    書面にまとめる

    議事録・合意書の案

  3. 3

    権限者の承認

    調達部門・法務・スポンサー

  4. 4

    契約に反映

    SOW・条件・契約タイプ

  5. 5

    計画に反映

    スケジュール・予算・リスク

当サイトの整理

特に気をつけたいのは、口頭だけの合意です。担当者どうしの「それでいきましょう」は、後で解釈が分かれる原因になります。範囲・価格・納期・受入基準・変更の手続きは、必ず書面に残します。

合意の内容によって、契約タイプの選び方が変わることもあります。範囲を段階に分けたなら、段階ごとの定額契約にする、などです。契約タイプはPMPの契約タイプ一覧で整理しています。合意した結果はスケジュール・予算・リスク登録簿にも反映し、関係者に知らせます。

アジャイルで外部の会社と組む場合は、交渉の中心が変わります。予測型では「何を・いくらで・いつまでに」を最初に固めるのが山場です。アジャイルでは範囲を最初に固めにくいので、「進め方の約束」を交渉で決めることが多くなります。たとえば、範囲の入れ替えのルール、スプリントごとの受け入れの方法、途中で打ち切れる条件、単価と上限額です。

契約後も、優先順位の調整を通して小さな交渉が続きます。そう考えておくと、相手との関係を保ちやすくなります。

PMP試験では交渉がどう問われる?

交渉の問題で、選択肢を見分けるポイントは次のとおりです。

  • 準備を飛ばす選択肢は誤り:相手の提示にすぐ応じる、根拠なく値切る、などは準備(目的・BATNA・限界)を欠いています。
  • 一方的な勝ち負けは誤りになりやすい:相手に過大な負担を押しつけると、品質の低下や関係の悪化を招きます。
  • 利害を探る選択肢が正解になりやすい:相手がなぜその条件にこだわるのかを確かめ、別の条件で解決を探る選択肢です。
  • 権限を超えない:PM が権限を超えて契約条件を決める選択肢は誤りです。

交渉の場面は、無料模試30問にも含めています。新ECOの26タスクの全体は新ECO(2026年版)の26タスク一覧で確認できます。

確認問題1

価格だけで押し合っている

(当サイトの独自問題)保守契約の交渉で、自社は年間費用の2割引きを求めています。ベンダーは1割引きが限界だと主張し、話が進みません。ベンダーの担当者は、雑談の中で「年度末までに受注を確定させたい」と話していました。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:1。立場(割引率)の押し合いから、利害(受注の時期)に目を向けます。早期の契約確定と引き換えに条件を改善するなど、双方が得をする合意を探れます。

2:利害を探る前に、立場の押し合いを強めています。関係が悪化するおそれもあります。3:準備した目的や限界を確かめずに譲っています。4:交渉で解決する努力をせずに、判断を上に預けています。

確認問題2

交渉の準備

(当サイトの独自問題)来週、主要部品の供給について、新しいベンダーと条件の交渉をします。プロジェクト・マネジャーは、調達部門の担当者と一緒に交渉に参加する予定です。現在、比べられる他社の見積もりはありません。プロジェクト・マネジャーが交渉の前に行うべきことはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:4。交渉の前に、目的・優先順位・限界を整理し、BATNA を強くしておきます。他社の見積もりがあれば、条件の妥当さを判断する根拠にもなります。

1:準備なしでは、不利な条件をのむおそれがあります。2:最初から対立を前提にした進め方は、Win-Win の合意を遠ざけます。3:技術や範囲を知る PM が加わる意味を失います。

確認問題3

交渉の場での口頭の合意

(当サイトの独自問題)ベンダーとの交渉の場で、口頭の合意ができました。納期を2週間早める代わりに、試験の一部をベンダーではなく自社で行う、という内容です。会議はまもなく終わります。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:3。合意した内容は、その場で要点を確かめて書面にします。権限者の承認を経てから、契約(SOW)と計画(スケジュール・資源・リスク)に反映します。

1:承認の前に作業を変えると、後で解釈が分かれたときに戻せません。2:自社の視点で内容を確かめ、承認を得る機会を失います。4:合意を一方的に覆すのは誠実さに欠けます。負担の影響は、合意の前に検討すべきでした。

よくある質問

BATNA とは何ですか?

交渉で合意できなかったときに取れる最善の代案です。他社に頼む、内製に切り替える、などが例です。良い代案があるほど、不利な条件をのまずに済みます。

プロジェクト・マネジャーが契約条件を決めてよいのですか?

組織が与えた権限の範囲内に限られます。多くの組織では、契約の締結は調達部門や法務の権限です。PM は交渉に参加し、プロジェクトの目的に合う条件になるよう支えます。

Win-Win の交渉は甘い交渉ではないのですか?

違います。自社の目的と限界は守ったうえで、相手の利害も満たせる条件を探す進め方です。価格以外の条件も組み合わせることで、双方にとってより大きな成果を得られることがあります。

出典・参考

  1. [1]PMI: PMP Examination Content Outline – 2026(PDF)
  2. [2]PMI: PMP Examination Content Outline – January 2021(旧版・PDF)
  3. [3]PMI: Code of Ethics and Professional Conduct

本番と同じペースで腕試し

記事の次は、本番形式の問題で。

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