回収期間法とは?
回収期間法(ペイバック法)は、投資した金額を、プロジェクトが生む収入や費用の削減で取り戻すまでに何年かかるかを計算し、投資を評価する方法です。
計算が簡単で、「早く元が取れるか」という分かりやすい物差しになります。資金に余裕が少ない組織や、技術の変化が速く長期の見通しが立てにくい投資で、よく使われます。
ECO 2026年版の Process タスク3「価値ベースのデリバリーを確実に支援する」には、価値を段階的に届ける機会の評価や、ビジネス価値の確認が含まれます。回収期間は、その価値を早く実現できるかを見る指標の1つです。
毎年の収入が均等な場合の計算は?
毎年同じ金額の収入があるなら、割り算1回で求められます。
回収期間 = 初期投資 ÷ 1年あたりの収入
- 1初期投資 = 1,200万円、毎年の収入 = 300万円
- 21,200 ÷ 300 = 4
回収期間 = 4年
当サイトの架空の例
月単位で収入が示されていれば、同じ式で月数が出ます。たとえば初期投資600万円で毎月50万円の削減なら、600 ÷ 50 = 12か月です。
毎年の収入が不均等な場合の計算は?
年ごとに収入が違う場合は、累計を足していき、初期投資を超える年を探します。まず、年ごとの累計と未回収の残りを表にします。
| 年 | その年の収入 | 累計 | 未回収の残り |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 200万円 | 200万円 | 800万円 |
| 2年目 | 300万円 | 500万円 | 500万円 |
| 3年目 | 400万円 | 900万円 | 100万円 |
| 4年目 | 500万円 | 1,400万円 | 回収済み |
3年目の終わりには、まだ100万円足りません。4年目の途中で、累計が1,000万円を超えます。
年の途中の回収はどう出す?
回収が終わる年については、足りなかった分をその年の収入で割り、年の途中のどこで回収できるかを出します。
回収期間 = 回収前の最後の年 + 残り ÷ 回収が終わる年の収入
- 13年目の終わりの累計 = 900万円、残り = 1,000 − 900 = 100万円
- 24年目の収入 = 500万円
- 3100 ÷ 500 = 0.2年
- 43 + 0.2 = 3.2年
回収期間 = 3.2年(約3年2か月)
当サイトの架空の例。年の途中の収入は均等に入ると仮定
0.2年を月に直すと、0.2 × 12 = 2.4か月です。選択肢が「3年2か月」のような形で示されることもあるので、換算できるようにしておきます。
割引回収期間法とは?
割引回収期間法は、将来の収入を現在の価値に割り引いてから、回収期間を出す方法です。ふつうの回収期間法が見ない「お金の時間価値」を入れられます。
(当サイトの架空の例)初期投資1,000万円、毎年の収入400万円、割引率10%で計算します。割り引かなければ、1,000 ÷ 400 = 2.5年です。
各年の現在価値 = 収入 ÷ (1 + 割引率)^年数 を累計する
- 11年目:400 ÷ 1.1 ≒ 363.6(累計 363.6)
- 22年目:400 ÷ 1.1² ≒ 330.6(累計 694.2)
- 33年目:400 ÷ 1.1³ ≒ 300.5(累計 994.7)
- 44年目:400 ÷ 1.1⁴ ≒ 273.2。残り 1,000 − 994.7 = 5.3 → 5.3 ÷ 273.2 ≒ 0.02年
割引回収期間 ≒ 3.02年(割り引かない場合は2.5年)
当サイトの架空の例
割り引くと、回収は約0.5年遅くなります。将来のお金ほど、価値が小さく数えられるからです。割引の考え方は NPV(正味現在価値)の計算とIRR で解説しています。
ただし割引回収期間法でも、「回収した後の収入を見ない」弱点は残ります。
回収期間法の弱点は?
回収期間法の大きな弱点は、次の2つです。
- 回収した後の収入を見ない:回収期間が長くても、その後に大きな収入が続くプロジェクトを、低く評価してしまいます。
- お金の時間価値を考えない:1年目の100万円と5年目の100万円を、同じ価値として足しています。
この弱点のせいで、回収期間だけで選ぶと判断を誤ることがあります。次の例で確かめます。
回収期間だけで選ぶと、どう誤る?
候補 P
- 収入(万円)1年目 500、2年目 500、その後 0
- 回収期間2年
- 収入の合計1,000万円(投資と同じ)
候補 Q
- 収入(万円)毎年 300 を5年間
- 回収期間約3.3年(1,000 ÷ 300)
- 収入の合計1,500万円(投資より500万円多い)
回収期間では P が有利。しかし P は元を取るだけで終わり、価値を生むのは Q です。
当サイトの架空の例
回収期間で比べると、P の方が1年以上早く元が取れます。しかし P は回収した時点で収入が止まり、もうけはありません。投資の価値で比べるなら、Q を選ぶべきです。
段階的に届けると、回収はどう変わる?
回収期間は、価値を届ける時期でも変わります。同じ投資でも、効果の一部を早く出せば、回収は早まります。
最後にまとめて公開
- 公開の時期12か月目の終わりに全機能
- 効果の出方13か月目から毎月100万円
- 回収の時期24か月目(12か月 + 1,200 ÷ 100)
半分を先に公開
- 公開の時期6か月目の終わりに半分、12か月目の終わりに残り
- 効果の出方7〜12か月目は毎月50万円、13か月目から毎月100万円
- 回収の時期21か月目(12か月目までに300万円、残り900 ÷ 100 = 9か月)
効果の一部を先に出すと、回収は3か月早まります。
当サイトの架空の例。投資は最初に全額かかり、効果は月ごとに均等に出ると仮定
アジャイルで価値の高い機能から順に届ける理由の1つが、これです。価値を届ける考え方は PMPの価値提供とは? で解説しています。
NPVとどう使い分ける?
| 観点 | 回収期間法 | NPV |
|---|---|---|
| 答えの単位 | 年・月 | 金額 |
| 時間価値 | 考えない(通常) | 考える |
| 回収後の収入 | 見ない | すべて見る |
| 向いている場面 | 資金の早期回収を重視する/先が読みにくい | 価値の総額で比べたい |
| 選び方 | 短い方 | 大きい方 |
試験の選定問題で、NPV・IRR・回収期間が並んでいたら、NPV や IRR を優先して判断するのが基本です。回収期間しか示されていなければ、短い方を選びます。
費用に対する便益の効率で比べる指標(BCR)は、費用便益分析とBCRの計算方法 で扱っています。
よくある誤りは?
回収期間の計算は単純ですが、次の5つで点を落としがちです。
- 不均等なのに平均で割る:年ごとに収入が違うなら、累計を足して、回収が終わる年を探します。
- 残りを前の年の収入で割る:割るのは、回収が終わる年の収入です。
- 年を月に直すときに10を掛ける:0.25年は 0.25 × 12 = 3か月です。2.5か月ではありません。
- 運用の費用を差し引き忘れる:毎年の効果は、運用にかかる費用を引いた後の正味の金額で数えます。
- 回収が早い=価値が大きいと考える:回収後の収入を見ていないので、価値の大きさは NPV で比べます。
確認問題1
不均等な収入の回収期間
(当サイトの独自問題)初期投資900万円の業務自動化プロジェクトで、効果の見込みは1年目300万円、2年目300万円、3年目200万円、4年目400万円です。スポンサーから「何年で元が取れるか」と聞かれました。正しい回答はどれか(年の途中の効果は均等に出ると仮定)。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:2。累計は1年目300、2年目600、3年目800で、残りは 900 − 800 = 100万円です。4年目の400万円で割ると 100 ÷ 400 = 0.25年なので、3 + 0.25 = 3.25年です。
1:3年目の終わりでは、まだ100万円足りません。3:900 ÷ 400 のように、投資を1年分の効果で割っています。4:4年目の途中で回収できるので、4年まではかかりません。
確認問題2
回収期間だけで選ぶ
(当サイトの独自問題)経営会議で、資金繰りの事情から「できるだけ早く投資を回収できる案」を1つ選ぶことになりました。手元にある資料は、各案の回収期間だけです。推薦すべき案はどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。早期の回収を重視し、示されている指標が回収期間だけなので、最も短い1.8年の案を選びます。
1・2・3:いずれも、1.8年より回収に時間がかかります。
確認問題3
回収期間とNPVが逆の結論
(当サイトの独自問題)2つの候補の財務分析が終わりました。候補 X は回収期間2年・NPV −30万円、候補 Y は回収期間3.5年・NPV +150万円です。スポンサーは、長期的な価値を重視すると述べています。プロジェクト・マネジャーの説明として最も適切なものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。NPV は、回収した後の収入とお金の時間価値の両方を反映しています。長期的な価値を重視するなら、NPV がプラスの Y が適しています。X は NPV がマイナスで、求める収益率に届きません。
1:回収期間法の弱点(回収後を見ない)に引っかかっています。2:スポンサーは長期的な価値を重視すると述べており、その基準なら NPV で優劣がつきます。4:単位の違う指標の順位を足しても、意味のある比較になりません。
次に何をすればいい?
回収期間は、累計の表を書けば確実に解けます。弱点(回収後を見ない・時間価値を見ない)を説明できるようにしておくと、NPV との比較問題で迷いません。計算全体の地図は PMPの計算問題の公式一覧 にあります。
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