PMI-ACPとはどんな資格?
PMI-ACP(PMI Agile Certified Practitioner)は、アジャイルの考え方・道具・技法を使って働く力を証明する資格です。PMPと同じPMI(米国の専門家団体)が認定しています。
PMIの公式ページは、対象者として7つの役割を挙げています。プロダクトオーナー、スクラムマスター、アジャイルチームのリーダー、開発者、プロジェクト・マネジャー、アジャイルコーチ、プロダクトマネジャーです。プロジェクト・マネジャーだけの資格ではない点が、PMPとの大きな違いです。
出題範囲は、2026年3月版の「PMI-ACP Examination Content Outline」(以下、ECO)で公開されています。スクラムなど特定の手法だけでなく、アジャイル全般の考え方が問われます。
POINT
2020年ごろの体験記には「7つの領域」とあるものなど、以前の出題範囲で書かれた情報が残っています。今のECOは、経験の要件を見直し、ほかの資格による経験の短縮も取り入れています。古い情報と混ぜないよう注意してください。
受験資格と試験の形式は?
受験資格は、学歴・研修・アジャイルの経験の3つです。経験の要件は、次のどれか1つを満たせば足ります。
| 項目 | PMI-ACPの要件(2026年3月版ECO) |
|---|---|
| 学歴 | 高校卒業またはそれに相当する学歴 |
| 研修 | アジャイルの実践・フレームワーク・手法についての正式な研修21時間 |
| 経験(どれか1つ) | 過去5年以内にアジャイルの経験2年 |
| GAC認定の学位+アジャイルの経験1年 | |
| 有効な他団体のアジャイル資格(取得から1年以上)+アジャイルの経験1年 | |
| 有効なPMP |
スクラムやSAFeなどの他団体の資格を1年以上持っていると、必要な経験2年のうち12か月分として扱われます。21時間の研修は、申請の前に終え、修了の証明を用意します。
PMIの資格をすでに持っている人は、過去5年以内のアジャイルとハイブリッドの経験が、ACPの申請に引き継がれます。経験を書き直す必要はありません(ECO)。
試験は120問・3時間です。そのうち20問は採点されない試行問題で、採点されるのは100問です。60問を解き終えたところで10分の休憩があり、休憩に入ると前半の問題には戻れません。
受験料は、PMPと同じく会員かどうかと地域で変わります(PMI認定ハンドブック)。1年の有効期間の中で3回まで受けられ、3回とも不合格なら、最後の受験日から1年待って再申請します。日本語でも受験できます。
PMI-ACPの4つの領域とPMPの範囲はどう違う?
ACPの出題は4つの領域に分かれます。PMPの3領域と並べると、見ている角度の違いがはっきりします。
PMI-ACP
2026年3月版ECO
- Mindset(考え方)28%
- Leadership(リーダーシップ)25%
- Product(プロダクト)19%
- Delivery(デリバリー)28%
PMP
2026年7月版ECO
- People(人)33%
- Process(プロセス)41%
- Business Environment(ビジネス環境)26%
- 予測型が約40%、アジャイルとハイブリッドが残り約60%
ACPはアジャイルの中を深く、PMPは予測型・アジャイル・ハイブリッドを横断して広く問う
PMPもアジャイルとハイブリッドが約6割を占めます。ただし、PMPが問うのは「プロジェクト全体をどう率いるか」です。契約・コスト・ガバナンス・コンプライアンスなども範囲に入ります。
ACPは、アジャイルのチームの中で価値をどう届けるかに焦点があります。プロダクトの考え方や、チームの働き方の深さが問われます。PMPで出るアジャイルの論点はPMPのアジャイル対策にまとめました。
ACPの4領域では、それぞれ何が問われる?
ACPの4領域を、PMPの勉強をした人に分かる言葉で言い換えます。タスクの数はECOの記載によるもので、合計24です(PMPは26)。
- Mindset(28%・7タスク):アジャイルの価値観と原則を、場面に合わせて使えるか。早く試して学ぶこと、協働しやすいチーム環境、心理的安全性、フィードバックの周期を短くすることが含まれます。
- Leadership(25%・6タスク):指示ではなく支援で率いるか。チームへの権限委譲、問題解決の支援、知識の共有、ビジョンの共有、対立への向き合い方が中心です。
- Product(19%・4タスク):何を作ると価値が出るかを決められるか。プロダクトバックログの洗練、インクリメントの管理、作業の見える化、価値の届け方が含まれます。
- Delivery(28%・7タスク):届け続けられるか。早いフィードバック、指標の管理、障害とリスク、ムダの排除、継続的な改善、顧客の巻き込み、流れの最適化です。
PMPの People 領域と重なる論点が多いのは、Leadership と Mindset です。PMPを先に勉強した人は、Product と Delivery の技法を足すと、ACPの範囲に近づきます。
難易度はPMPとACPのどちらが高い?
PMIは、どちらの資格も合格率を公表していません。そのため、合格率で難易度を比べることはできません。ここでは、公式に分かる数字と範囲の広さで比べます。
| 比べる点 | PMI-ACP | PMP |
|---|---|---|
| 問題数・時間 | 120問・3時間(1問あたり90秒) | 180問・240分(休憩は含まない。1問あたり約80秒) |
| 採点される問題 | 100問 | 170問 |
| 領域とタスク | 4領域・24タスク | 3領域・26タスク |
| 必要な研修 | 21時間 | 35時間 |
| 必要な経験 | アジャイルの経験2年など | プロジェクトを率いた経験3年など(大卒の場合) |
| 範囲の広さ | アジャイルに絞って深い | 予測型・アジャイル・ハイブリッドを横断 |
| 更新 | 3年で30PDU | 3年で60PDU |
準備の負担は、範囲が広く問題数も多いPMPの方が大きいと考えるのが自然です。一方で、アジャイルの経験が浅い人には、ACPの方が難しく感じられることもあります。ACPは、チームが自分たちで決めて動く場面(自己組織化チーム)の判断を深く問うからです。
PMPを持つ人がACPを目指すなら、何を足す?
ACPのECOには、出題に関わる道具と技法の例が並んでいます。一部を分類して挙げます。PMPの勉強で名前だけ覚えたものは、使い方まで確かめておきます。
| 分類 | ECOに挙がっている技法の例 |
|---|---|
| 見積もり | プランニングポーカー、ワイドバンド・デルファイ、Tシャツサイズ、アフィニティ見積もり |
| 見える化と指標 | 累積フロー図、WIP制限、バーンダウン・バーンアップ、サイクルタイムとリードタイム |
| 価値と優先順位 | 狩野分析、MMF(市場に出せる最小限の機能)、MoSCoW、MVP |
| リスクと品質 | リスク調整済みバックログ、リスク・バーンダウン、スパイク、完了の定義(DoD) |
| 改善 | バリューストリーム・マッピング、なぜなぜ分析、プレモーテム、振り返り |
ECOは、勉強の資料も挙げています。PMIの認定の試験対策講座、ACPの模擬試験、PMI Study Hall、Agile Practice Guide などです。21時間の研修は、出題範囲に沿い、演習と修了テスト、修了証のあるものが条件です。
PMPとACPはどちらを先に取るべき?
判断の軸は2つです。今の仕事の立場と、経験の要件をどちらで満たせるかです。
- プロジェクトを率いる立場で、経験が3年以上ある:PMPを先に取ります。合格すれば、有効なPMPでACPの経験の要件を満たせます。
- アジャイルチームの一員として働いていて、率いた経験はまだ少ない:ACPを先に取ります。PMPの経験の要件(率いた経験)を満たすまでの間に、アジャイルの力を証明できます。
- スクラムマスターやプロダクトオーナーを目指している:ACPか、スクラム専門の資格が候補です。違いはスクラムの資格の比較で整理しています。
- 転職で「プロジェクト・マネジャー」の求人に応募したい:求人票で名前が挙がりやすいのはPMPです。ACPは補う資格と考えます。
両方を持つ場合の更新も確かめておきます。CCRハンドブックによると、パワースキルとビジネス感覚のPDUは、持っているすべての資格に数えられます。ギビングバックのPDUも同じです。片方の更新のために集めたPDUの多くを、もう片方にも使えます。
PMPを先に受けるなら、アジャイルの論点はタスク別ドリルで領域ごとに練習しておくと、ACPに進んだときの土台にもなります。