三点見積もりとは?
三点見積もりは、作業の所要期間やコストを1つの数字ではなく、3つの数字で見積もる方法です。
- 楽観値(O:Optimistic):すべてがうまくいった場合の値
- 最可能値(M:Most likely):最も起こりやすい値。教材や問題集によっては「最頻値」とも呼ぶ
- 悲観値(P:Pessimistic):悪いことが重なった場合の値
1つの数字(一点見積り)では、その数字にどれくらいの不確かさがあるかが伝わりません。3つの数字を使うと、期待値とばらつきの両方を示せます。
新しい技術を使う作業や、過去の実績が少ない作業に向いた方法です。ECO 2026年版の Process タスク8(スケジュール)には、作業の見積りが含まれます。タスク6(財務)にはリスクとコンティンジェンシーの資金の定量化があり、どちらにも三点見積もりが使えます。
三点見積もりはどう進める?
計算の前に、3つの値をどう集めるかで見積りの質が決まります。進め方は次のとおりです。
- 1
作業を分ける
WBS の作業パッケージやアクティビティの単位で見積もる
- 2
担当者と3つの値を出す
作業をする人と一緒に、楽観・最可能・悲観の値と、その前提を書き出す
- 3
期待値を計算する
問題文や組織の指定に従い、PERT か三角分布の式を使う
- 4
ばらつきを出す
標準偏差(PERT では (P − O) ÷ 6)で、不確かさの大きさを示す
- 5
経路や全体にまとめる
期待値は足す。ばらつきは分散を足してから平方根を取る
- 6
期日と予備を決める
守れる確率の目安から、約束する期日やコンティンジェンシー予備を決める
当サイトの整理
3つの値を聞くときは、悲観値の前提(何が起きた場合か)も書いておきます。前提があいまいだと、悲観値が大きく水増しされたり、逆に楽観的すぎたりします。
経路にまとめるには、作業の順序が決まっている必要があります。順序の決め方は PDMの4つの依存関係とリード・ラグ で確認できます。
三角分布の式は?
三角分布は、3つの値を同じ重みで平均する方法です。
期待値 = (O + M + P) ÷ 3
- 1O = 4日、M = 7日、P = 16日
- 2(4 + 7 + 16) ÷ 3 = 27 ÷ 3 = 9日
期待値 = 9日
当サイトの架空の例
悲観値が大きく離れているので、期待値(9日)は最可能値(7日)より長くなっています。悪いことが起きる可能性を、見積りに反映した結果です。
ベータ分布(PERT)の式は?
ベータ分布を使う方法は、PERT と呼ばれます。PERT は Program Evaluation and Review Technique の略です。最可能値に4倍の重みを付け、6で割ります。
期待値 = (O + 4M + P) ÷ 6、標準偏差 = (P − O) ÷ 6
- 14M = 4 × 7 = 28
- 2期待値 = (4 + 28 + 16) ÷ 6 = 48 ÷ 6 = 8日
- 3標準偏差 = (16 − 4) ÷ 6 = 12 ÷ 6 = 2日
- 4分散 = 2 × 2 = 4
期待値 = 8日、標準偏差 = 2日
当サイトの架空の例
| 三角分布 | PERT(ベータ分布) | |
|---|---|---|
| 式 | (O + M + P) ÷ 3 | (O + 4M + P) ÷ 6 |
| 重み | 3つとも同じ | 最可能値が4倍 |
| 例の期待値 | 9日 | 8日 |
| 特徴 | 極端な値の影響を受けやすい | 最可能値に近くなる |
同じ3つの値でも、PERT の方が最可能値(7日)に近い結果になります。問題文に「ベータ分布」「PERT」「加重平均」とあれば PERT を使います。「三角分布」「単純平均」とあれば三角分布です。
標準偏差と信頼区間はどう使う?
標準偏差は、見積りのばらつきの大きさです。PERT では (P − O) ÷ 6 で近似します。期待値を中心に標準偏差の何倍の幅を取るかで、その範囲に収まる確率の目安が分かります。
| 幅 | 範囲 | 収まる確率の目安 |
|---|---|---|
| ±1標準偏差 | 8 ± 2 = 6〜10日 | 約68% |
| ±2標準偏差 | 8 ± 4 = 4〜12日 | 約95% |
| ±3標準偏差 | 8 ± 6 = 2〜14日 | 約99.7% |
確率の値は、分布を正規分布とみなしたときの目安です。試験では「約68%・約95%・約99.7%」の3つを覚えておけば対応できます。
複数の作業をつなぐと、ばらつきはどうなる?
複数の作業を順番につなぐ経路では、期待値はそのまま足せます。しかし、標準偏差は足せません。分散(標準偏差の2乗)を足し、最後に平方根を取ります。
経路の標準偏差 = √(各作業の分散の合計)
- 1作業1:O 4・M 7・P 16 → 期待値 8、標準偏差 2、分散 4
- 2作業2:O 6・M 9・P 18 → 期待値 (6 + 36 + 18) ÷ 6 = 10、標準偏差 12 ÷ 6 = 2、分散 4
- 3経路の期待値 = 8 + 10 = 18日
- 4経路の分散 = 4 + 4 = 8
- 5経路の標準偏差 = √8 ≒ 2.83日(2 + 2 = 4日ではない)
経路の期待値 18日、標準偏差 約2.83日
当サイトの架空の例
標準偏差を単純に足すと、経路全体のばらつきを大きく見積もりすぎます。作業ごとのぶれが互いに無関係なら、早く終わる作業と遅れる作業が打ち消し合うからです。
期日はどう決める?期待値で約束すると守れるのは約50%
期待値は「平均的にかかる期間」です。期待値をそのまま期日にすると、正規分布で近似した場合、守れる確率は約50%しかありません。
期日を何日に置けば、どのくらいの確率で守れるのか。目安は次のとおりです(期待値8日・標準偏差2日の例)。
| 約束する期日 | 例 | その日までに終わる確率 |
|---|---|---|
| 期待値 | 8日 | 約50% |
| 期待値 + 1標準偏差 | 10日 | 約84% |
| 期待値 + 2標準偏差 | 12日 | 約97.7% |
| 期待値 + 3標準偏差 | 14日 | 約99.9% |
「±2標準偏差で約95%」は、範囲の両側をあわせた確率です。期日のように「それより早く終わればよい」場合は、片側だけを見ます。外に出る約5%のうち、遅れる側は半分の約2.5%なので、+2標準偏差までに終わる確率は約97.7%です。
期日と期待値の差は、スケジュールの余裕(予備)になります。見積りに含めた余裕と、リスクに備える予備費は、分けて管理します。
試験でよくある誤りは?
三点見積もりの計算問題では、誤答の選択肢が決まった間違い方から作られています。代表的なものを押さえておくと、選択肢を消しやすくなります。
| 誤り | 正しい考え方 |
|---|---|
| 最可能値をそのまま期待値にする | 期待値は3つの値から計算する |
| 指定がないのに三角分布で計算する | 指定がなければ PERT を考える。「三角分布」「単純平均」とあれば ÷3 |
| 経路の標準偏差を、各作業の標準偏差の合計で出す | 分散を足してから平方根を取る |
| 期日を守れる確率に「±2標準偏差で約95%」を使う | 期日は片側で考える。+2標準偏差までなら約97.7% |
アジャイルではどう見積もる?
アジャイルでは、作業ごとの日数を三点で見積もるより、ストーリーポイントによる相対見積もりがよく使われます。チームで規模を比べて点数を付け、ベロシティの実績から見通しを出します。
それでも「幅で示す」という考え方は同じです。ベロシティが高い回と低い回の両方で計算し、リリース時期を幅で伝えます。相対見積もりの進め方は ストーリーポイントとは? で解説しています。
確認問題1
PERTの期待値を求める
(当サイトの独自問題)新しい決済機能の結合テストについて、担当者から見積りが出ました。楽観値10日、最可能値16日、悲観値28日です。プロジェクトの標準では、ベータ分布で期待値を計算します。スケジュールに入れるべき期間はどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:3。(10 + 4 × 16 + 28) ÷ 6 = (10 + 64 + 28) ÷ 6 = 102 ÷ 6 = 17日です。
1:三角分布 (10 + 16 + 28) ÷ 3 = 18日です。2:最可能値をそのまま使っています。4:期待値17日に、標準偏差 (28 − 10) ÷ 6 = 3日を足した値です。期日の余裕を考えるときの値で、期待値ではありません。
確認問題2
95%の確からしさで約束できる範囲
(当サイトの独自問題)ある工程の PERT による期待値は40日、標準偏差は3日です。スポンサーから「95%程度の確からしさで、何日から何日の間に終わると言えるか」と聞かれました。回答すべき範囲はどれか(正規分布で近似)。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:4。約95%は ±2標準偏差なので、40 ± 6 = 34〜46日です。
1:±1標準偏差(約68%)の範囲です。2:±3標準偏差(約99.7%)の範囲にあたります。3:期待値から上側だけに2標準偏差を取っています。範囲を聞かれているので、両側に取るのが正しい答え方です。
確認問題3
一点見積りしか出てこない
(当サイトの独自問題)社内で初めて使うクラウド基盤の構築について、担当者は「20日です」と一点の見積りだけを出してきました。過去の実績はなく、担当者自身も不安そうです。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
正解と解説を見る
正解:2。不確かさが大きい作業は、三点見積もりで期待値とばらつきを示すのが適切です。担当者と一緒に見積もると、前提やリスクも共有できます。
1:根拠のない一律の上乗せは、見積りの信頼性を下げます。3:性質の違う作業の実績は、そのままでは見積りの根拠になりません。4:計画に入れずに進めるのは、スケジュール管理の放棄です。
次に何をすればいい?
PERT の式と標準偏差の式は、手で何度か書けば覚えられます。期待値・標準偏差・期日の確率の3つを、1つの例で続けて計算してみてください。
見積りができたら、期間を短くする方法へ進むと、スケジュールの計算がひと通りそろいます。詳しくは クラッシングとファストトラッキングの違い を参照してください。ほかの公式は PMPの計算問題の公式一覧 にまとめています。
見積りを含む問題は、無料模試30問で本番の形式で確かめられます。