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トータルフロートとフリーフロートの違い|計算式と例題で理解

トータルフロート(全余裕)とフリーフロート(自由余裕)の違いと計算式を、値が食い違う例題で解説。マイナスのフロート、1始まりでの式、よくある誤解、遅れが出たときの判断と確認問題3問つき。

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執筆
プロマネ模試 編集部
まず結論

この記事の要点

  • トータルフロートは「プロジェクトの完了日を遅らせずに、作業を遅らせられる日数」です。フリーフロートは「後続の作業の開始を遅らせずに、遅らせられる日数」です。
  • トータルフロート = LS − ES(= LF − EF)。フリーフロート = 後続の ES の最小値 − 自分の EF です(0始まりの場合)。
  • フリーフロートはトータルフロート以下です。トータルフロートが2日あってもフリーフロートが0日なら、1日の遅れで後続の作業の開始がずれます。
  • マイナスのフロートは、課された期限に今の計画では間に合わないことを示します。

トータルフロートとフリーフロートの違いは?

フロート(スラックとも呼びます)は、作業を遅らせても問題が起きない日数=余裕です。何に対して問題が起きないかで、2種類に分かれます。

2つのフロート

トータルフロート

全余裕

  • 遅らせないものプロジェクトの完了日
  • 計算式(0始まり)LS − ES(または LF − EF)
  • 性質同じ経路の作業で共有する

フリーフロート

自由余裕

  • 遅らせないもの直後の作業の最早開始日
  • 計算式(0始まり)後続の ES の最小値 − 自分の EF
  • 性質その作業だけが使える

フリーフロート ≦ トータルフロート。トータルフロートが0なら、その作業はクリティカルパス上にあります。

当サイトの整理

計算には、各作業の ES・EF・LS・LF(最早開始・最早終了・最遅開始・最遅終了)が必要です。求め方は フォワードパスとバックワードパスの計算 で解説しています。

例題:2つのフロートがずれるネットワーク

2つのフロートの違いが出るように、次のネットワークで考えます(当サイトの架空の例・単位は日・0始まり)。

作業一覧と計算結果
作業期間先行ESEFLSLF
A3なし0303
B2A3557
C4B59711
D8A311311
E3C・D11141114

経路は A → B → C → E(3+2+4+3=12日)と A → D → E(3+8+3=14日)の2本です。クリティカルパスは A → D → E で、プロジェクトの期間は14日です。

トータルフロートはどう計算する?

トータルフロートは、最遅と最早の差です。開始で比べても、終了で比べても同じ値になります。

トータルフロート(TF)

TF = LS − ES = LF − EF

  1. 1A:0 − 0 = 0
  2. 2B:5 − 3 = 2(検算:7 − 5 = 2)
  3. 3C:7 − 5 = 2(検算:11 − 9 = 2)
  4. 4D:3 − 3 = 0
  5. 5E:11 − 11 = 0

B と C に2日ずつ。ただし、この2日は B と C で共有している

当サイトの架空の例

B と C は、同じ経路(A → B → C → E)に並んでいます。この経路は最長より2日短いので、経路全体で使える余裕は2日です。B が2日使えば、C の余裕は0になります。合わせて4日あるわけではありません。

フリーフロートはどう計算する?

フリーフロートは、自分の EF と、直後の作業の ES との間のすき間です。後続が複数あるときは、その ES の最小値を使います。最後の作業は、プロジェクトの完了日と比べます。

フリーフロート(FF)

FF = 後続の ES の最小値 − 自分の EF

  1. 1A:min(B の ES 3, D の ES 3) − 3 = 0
  2. 2B:C の ES 5 − 5 = 0
  3. 3C:E の ES 11 − 9 = 2
  4. 4D:E の ES 11 − 11 = 0
  5. 5E:完了 14 − 14 = 0

B は TF 2日なのに FF 0日。C は TF 2日・FF 2日

当サイトの架空の例

B が1日遅れても、プロジェクトの完了日(14日)は変わりません。トータルフロートが2日あるからです。しかし C は B の終了を待つので、C の開始は1日遅れます。B のフリーフロートが0だからです。

実務では、この違いが大切です。B の遅れは、完了日に響かなくても C の担当者の予定を狂わせます。C の担当者には、早めに知らせる必要があります。

POINT

初日を1日目と数える「1始まり」の教材では、次の作業の ES が「前の EF + 1」になります。そのためフリーフロートは「後続の ES の最小値 − 自分の EF − 1」で計算します。トータルフロート(LS − ES)は、どちらの数え方でも同じ値です。

マイナスのフロートとは?

顧客や契約から完了日が決められている場合、バックワードパスはその期限から始めます。期限が計画より早いと、フロートがマイナスになります。

期限が12日目のときのフロート

最後の作業の LF = 課された期限 12

  1. 1計画上の完了 = 14日(フォワードパスの結果)
  2. 2E:LF 12、LS 12 − 3 = 9 → TF = 9 − 11 = −2
  3. 3D:LF 9、LS 9 − 8 = 1 → TF = 1 − 3 = −2
  4. 4A:LF = min(B の LS 3, D の LS 1) = 1、LS −2 → TF = −2 − 0 = −2

クリティカルパス上の作業のフロートが −2:今の計画では期限に2日足りない

当サイトの架空の例

マイナスのフロートは、計算の誤りではなく、計画が期限に間に合っていないという警告です。

対応の候補は、スケジュールの短縮(クラッシングとファストトラッキング)、スコープや期限の見直しなどです。期限やスコープを変えるなら、変更管理の手続きでスポンサーや顧客と合意します。

人や設備の取り合いで、フロートが消えることもあります。資源の制約を考えた調整は 資源平準化 を参照してください。

試験ではどう判断する?

  • 遅れ ≦ トータルフロート → 完了日は遅れない。遅れ > トータルフロート → 超えた日数だけ完了日が遅れる。
  • 遅れ > フリーフロート → 後続の作業の開始が遅れる。後続の担当者との調整が要る。
  • 同じ経路のフロートは共有 → 先の作業が余裕を使うと、後の作業の余裕が減る。
  • フロートが0の作業がクリティカルパス → 期限が課されているときは、最も小さいフロートの作業がクリティカルパス。

依存関係にリードやラグがある場合は、フロートの計算にもその日数が入ります。依存関係の種類は PDMの4つの依存関係とリード・ラグ で確認してください。

プロジェクト・マネジャー(PM)は、フロートの残りを定期的に見ます。フロートの減り方が速い経路は、遅れの兆しです。早めに手を打てば、クリティカルパスになる前に対応できます。

よくある誤解は?

フロートの問題で迷うのは、次の5つの思い込みがあるときです。

  • 同じ経路のフロートを足す:B と C に2日ずつあっても、合わせて4日ではありません。経路全体で2日を分け合います。
  • フロートは担当者が自由に使える:トータルフロートは同じ経路の作業で共有します。どの作業が使うかは PM が調整します。
  • 2つのフロートはいつも同じ値:合流点の手前などで食い違います。例題の B は TF 2日・FF 0日でした。
  • フロートが0の作業だけ見ればよい:フロートが1〜2日しかない作業も、少し遅れるだけでクリティカルになります。
  • マイナスのフロートは計算ミス:期限に間に合わないことを示す、正しい結果です。

確認問題1

余裕のある作業が2日遅れた

(当サイトの独自問題)作業 B のトータルフロートは2日、フリーフロートは0日です。B の後には作業 C が続き、C は別の協力会社が担当しています。B の担当者から、B が2日遅れると連絡がありました。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:3。遅れ(2日)はトータルフロート(2日)以内なので、完了日は変わりません。しかしフリーフロートは0なので、C の開始は2日遅れます。C を担当する協力会社に伝え、開始日を調整します。この遅れで B の経路の余裕はなくなるので、以後はクリティカルパスと同じように見張ります。

1:トータルフロートの範囲内なので、完了日は変わりません。2:後続の C の開始がずれるので、記録だけでは不十分です。4:完了日を守れるので、費用をかけて縮める必要はありません。

確認問題2

フリーフロートを求める

(当サイトの独自問題)0始まりの工程表で、作業 X の EF は8日、LF は12日です。X の後続は Y と Z の2つで、Y の ES は10日、Z の ES は12日です。X の担当者に「後続に迷惑をかけずに遅らせられる日数」を伝えます。正しいものはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:1。フリーフロート = 後続の ES の最小値 − 自分の EF = min(10, 12) − 8 = 2日です。

2:LF − EF = 12 − 8 = 4日で、トータルフロートです。完了日には響きませんが、Y の開始は遅れます。3:LF(12)と Z の ES(12)を比べています。4:後続の ES の平均(11)から EF を引いています。

確認問題3

工程表にマイナスのフロートが出た

(当サイトの独自問題)顧客との契約で、システムの稼働日が決まっています。スケジュール管理ツールに契約上の稼働日を入れたところ、クリティカルパス上の作業のフロートが −3日と表示されました。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。

選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。

正解と解説を見る

正解:2。マイナスのフロートは、今の計画では期限に3日間に合わないことを示します。まずクラッシング・ファストトラッキング・スコープの調整などの選択肢を分析し、そのうえでスポンサーや顧客と対応を決めます。

1:設定の誤りではなく、計画と期限のずれを示す正しい結果です。3:稼働日は顧客との契約で決まっています。短縮の手を調べる前に延期を求めるのは早すぎます。4:分析の前に対策を決めており、コストや品質への影響を評価していません。

次に何をすればいい?

2つのフロートの違いは、両者がずれる例を手で計算すると身につきます。この記事の例題を、白紙で再計算してみてください。

スケジュールの計算を状況問題の中で使う練習は、無料模試30問で試せます。

よくある質問

トータルフロートとフリーフロートが同じ値になるのはどんなときですか?

余裕のある経路のうち、合流点の直前にある作業で同じになりやすいです。例題の C は、合流点 E の直前にあり、TF・FF ともに2日でした。

フロートとスラックは違うものですか?

同じ意味で使われます。PMP の教材では、フロートと書かれることが多いです。

フロートは誰のものですか?

トータルフロートは、同じ経路の作業で共有する余裕です。どの作業が使うかは、プロジェクト・マネジャーが調整します。担当者が自由に使ってよいのは、フリーフロートの範囲までと考えると安全です。

1始まりの問題では、どの式が変わりますか?

EF = ES + 期間 − 1 となり、次の作業の ES は前の EF + 1 になります。フリーフロートは「後続の ES の最小値 − 自分の EF − 1」です。トータルフロートの値は0始まりと同じです。

出典・参考

  1. [1]PMI: PMP Examination Content Outline – 2026(PDF。Process タスク8)
  2. [2]PMI: Project Management Professional (PMP)(試験内容の概要 ECO 2026年7月版の入手先)

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