トータルフロートとフリーフロートの違いは?
フロート(スラックとも呼びます)は、作業を遅らせても問題が起きない日数=余裕です。何に対して問題が起きないかで、2種類に分かれます。
トータルフロート
全余裕
- 遅らせないものプロジェクトの完了日
- 計算式(0始まり)LS − ES(または LF − EF)
- 性質同じ経路の作業で共有する
フリーフロート
自由余裕
- 遅らせないもの直後の作業の最早開始日
- 計算式(0始まり)後続の ES の最小値 − 自分の EF
- 性質その作業だけが使える
フリーフロート ≦ トータルフロート。トータルフロートが0なら、その作業はクリティカルパス上にあります。
当サイトの整理
計算には、各作業の ES・EF・LS・LF(最早開始・最早終了・最遅開始・最遅終了)が必要です。求め方は フォワードパスとバックワードパスの計算 で解説しています。
例題:2つのフロートがずれるネットワーク
2つのフロートの違いが出るように、次のネットワークで考えます(当サイトの架空の例・単位は日・0始まり)。
| 作業 | 期間 | 先行 | ES | EF | LS | LF |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 3 | なし | 0 | 3 | 0 | 3 |
| B | 2 | A | 3 | 5 | 5 | 7 |
| C | 4 | B | 5 | 9 | 7 | 11 |
| D | 8 | A | 3 | 11 | 3 | 11 |
| E | 3 | C・D | 11 | 14 | 11 | 14 |
経路は A → B → C → E(3+2+4+3=12日)と A → D → E(3+8+3=14日)の2本です。クリティカルパスは A → D → E で、プロジェクトの期間は14日です。
トータルフロートはどう計算する?
トータルフロートは、最遅と最早の差です。開始で比べても、終了で比べても同じ値になります。
TF = LS − ES = LF − EF
- 1A:0 − 0 = 0
- 2B:5 − 3 = 2(検算:7 − 5 = 2)
- 3C:7 − 5 = 2(検算:11 − 9 = 2)
- 4D:3 − 3 = 0
- 5E:11 − 11 = 0
B と C に2日ずつ。ただし、この2日は B と C で共有している
当サイトの架空の例
B と C は、同じ経路(A → B → C → E)に並んでいます。この経路は最長より2日短いので、経路全体で使える余裕は2日です。B が2日使えば、C の余裕は0になります。合わせて4日あるわけではありません。
フリーフロートはどう計算する?
フリーフロートは、自分の EF と、直後の作業の ES との間のすき間です。後続が複数あるときは、その ES の最小値を使います。最後の作業は、プロジェクトの完了日と比べます。
FF = 後続の ES の最小値 − 自分の EF
- 1A:min(B の ES 3, D の ES 3) − 3 = 0
- 2B:C の ES 5 − 5 = 0
- 3C:E の ES 11 − 9 = 2
- 4D:E の ES 11 − 11 = 0
- 5E:完了 14 − 14 = 0
B は TF 2日なのに FF 0日。C は TF 2日・FF 2日
当サイトの架空の例
B が1日遅れても、プロジェクトの完了日(14日)は変わりません。トータルフロートが2日あるからです。しかし C は B の終了を待つので、C の開始は1日遅れます。B のフリーフロートが0だからです。
実務では、この違いが大切です。B の遅れは、完了日に響かなくても C の担当者の予定を狂わせます。C の担当者には、早めに知らせる必要があります。
POINT
初日を1日目と数える「1始まり」の教材では、次の作業の ES が「前の EF + 1」になります。そのためフリーフロートは「後続の ES の最小値 − 自分の EF − 1」で計算します。トータルフロート(LS − ES)は、どちらの数え方でも同じ値です。
マイナスのフロートとは?
顧客や契約から完了日が決められている場合、バックワードパスはその期限から始めます。期限が計画より早いと、フロートがマイナスになります。
最後の作業の LF = 課された期限 12
- 1計画上の完了 = 14日(フォワードパスの結果)
- 2E:LF 12、LS 12 − 3 = 9 → TF = 9 − 11 = −2
- 3D:LF 9、LS 9 − 8 = 1 → TF = 1 − 3 = −2
- 4A:LF = min(B の LS 3, D の LS 1) = 1、LS −2 → TF = −2 − 0 = −2
クリティカルパス上の作業のフロートが −2:今の計画では期限に2日足りない
当サイトの架空の例
マイナスのフロートは、計算の誤りではなく、計画が期限に間に合っていないという警告です。
対応の候補は、スケジュールの短縮(クラッシングとファストトラッキング)、スコープや期限の見直しなどです。期限やスコープを変えるなら、変更管理の手続きでスポンサーや顧客と合意します。
人や設備の取り合いで、フロートが消えることもあります。資源の制約を考えた調整は 資源平準化 を参照してください。
試験ではどう判断する?
- 遅れ ≦ トータルフロート → 完了日は遅れない。遅れ > トータルフロート → 超えた日数だけ完了日が遅れる。
- 遅れ > フリーフロート → 後続の作業の開始が遅れる。後続の担当者との調整が要る。
- 同じ経路のフロートは共有 → 先の作業が余裕を使うと、後の作業の余裕が減る。
- フロートが0の作業がクリティカルパス → 期限が課されているときは、最も小さいフロートの作業がクリティカルパス。
依存関係にリードやラグがある場合は、フロートの計算にもその日数が入ります。依存関係の種類は PDMの4つの依存関係とリード・ラグ で確認してください。
プロジェクト・マネジャー(PM)は、フロートの残りを定期的に見ます。フロートの減り方が速い経路は、遅れの兆しです。早めに手を打てば、クリティカルパスになる前に対応できます。
よくある誤解は?
フロートの問題で迷うのは、次の5つの思い込みがあるときです。
- 同じ経路のフロートを足す:B と C に2日ずつあっても、合わせて4日ではありません。経路全体で2日を分け合います。
- フロートは担当者が自由に使える:トータルフロートは同じ経路の作業で共有します。どの作業が使うかは PM が調整します。
- 2つのフロートはいつも同じ値:合流点の手前などで食い違います。例題の B は TF 2日・FF 0日でした。
- フロートが0の作業だけ見ればよい:フロートが1〜2日しかない作業も、少し遅れるだけでクリティカルになります。
- マイナスのフロートは計算ミス:期限に間に合わないことを示す、正しい結果です。
確認問題1
余裕のある作業が2日遅れた
(当サイトの独自問題)作業 B のトータルフロートは2日、フリーフロートは0日です。B の後には作業 C が続き、C は別の協力会社が担当しています。B の担当者から、B が2日遅れると連絡がありました。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:3。遅れ(2日)はトータルフロート(2日)以内なので、完了日は変わりません。しかしフリーフロートは0なので、C の開始は2日遅れます。C を担当する協力会社に伝え、開始日を調整します。この遅れで B の経路の余裕はなくなるので、以後はクリティカルパスと同じように見張ります。
1:トータルフロートの範囲内なので、完了日は変わりません。2:後続の C の開始がずれるので、記録だけでは不十分です。4:完了日を守れるので、費用をかけて縮める必要はありません。
確認問題2
フリーフロートを求める
(当サイトの独自問題)0始まりの工程表で、作業 X の EF は8日、LF は12日です。X の後続は Y と Z の2つで、Y の ES は10日、Z の ES は12日です。X の担当者に「後続に迷惑をかけずに遅らせられる日数」を伝えます。正しいものはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:1。フリーフロート = 後続の ES の最小値 − 自分の EF = min(10, 12) − 8 = 2日です。
2:LF − EF = 12 − 8 = 4日で、トータルフロートです。完了日には響きませんが、Y の開始は遅れます。3:LF(12)と Z の ES(12)を比べています。4:後続の ES の平均(11)から EF を引いています。
確認問題3
工程表にマイナスのフロートが出た
(当サイトの独自問題)顧客との契約で、システムの稼働日が決まっています。スケジュール管理ツールに契約上の稼働日を入れたところ、クリティカルパス上の作業のフロートが −3日と表示されました。プロジェクト・マネジャーが次に行うべきことはどれか。
選択肢を押すと、正誤と解説が表示されます。
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正解:2。マイナスのフロートは、今の計画では期限に3日間に合わないことを示します。まずクラッシング・ファストトラッキング・スコープの調整などの選択肢を分析し、そのうえでスポンサーや顧客と対応を決めます。
1:設定の誤りではなく、計画と期限のずれを示す正しい結果です。3:稼働日は顧客との契約で決まっています。短縮の手を調べる前に延期を求めるのは早すぎます。4:分析の前に対策を決めており、コストや品質への影響を評価していません。
次に何をすればいい?
2つのフロートの違いは、両者がずれる例を手で計算すると身につきます。この記事の例題を、白紙で再計算してみてください。
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